クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第277回 ビゼー『アルルの女』
イラスト/なめきみほ
虎は死して皮を残し、人は死して名を残す
今日6月3日は、フランスの作曲家ビゼー(1838~75)の命日です。
存命中に成功を収めることができなかったにも関わらず、その死後再評価が進み、今では極めて重要な存在となった作曲家の筆頭がビゼーです。代表作として名高いオペラ『カルメン』はその象徴といえそうです。
1875年3月3日に、パリのオペラ・コミック座で行われた初演は大失敗。失意のビゼーは、持病の慢性扁桃炎が悪化して、なんと6月3日に急死してしまったのです。その後友人エルネスト・ギローによって改作&再演された『カルメン』は徐々に人気を高め、今やオペラ史上最高峰の人気作となっています。
そのギローが関わったもう一つの作品が『アルルの女』です。編曲の仕事で生計を立てていたビゼーのもとに、ドーデの戯曲『アルルの女』の劇付随音楽作曲の依頼が届いたのです。これを見事に完成させたビゼーは、中の4曲を管弦楽用に編曲(第1組曲)。さらには、ビゼーの死後ドーデが「第2組曲」を編纂したのです。
今ではどちらも、オーケストラの人気レパートリーとなっているのですから、持つべきものは友達ですね。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。