クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第279回 ベートーヴェン『ピアノ協奏曲第1番』
イラスト/なめきみほ
アルゲリッチ伝説の起点となった名曲とは
今日6月5日は、現代最高のピアニストの1人、マルタ・アルゲリッチ(1941~)の誕生日です。
アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれのアルゲリッチは、5歳でピアノを始め、16歳の年にあたる1957年、ブゾーニ国際ピアノ・コンクールとジュネーブ国際音楽コンクールで優勝。さらには1965年のショパン国際ピアノ・コンクールにおいて、センセーショナルな優勝を果たしたことによって世界中の注目を集めます。
その演奏スタイルは情熱的の一言。音楽の本質を感性で捉える能力と、それを支える圧倒的なテクニックは前代未聞。しかもこれが絶世の美女なのですから、神様はかなり不公平です。2024年の今日83歳となったアルゲリッチのピアニズムは、いっこうに衰えを見せず。逆にさらに上手くなっているのではないかという、驚きの言葉もさえも聞こえてきます。
そのアルゲリッチ伝説の始まりが、8歳の時に公の場で初めてベートーヴェンの『ピアノ協奏曲第1番』を弾いたことだとか。稀代のピアニスト伝説は、今も継続中です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。