クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第282回 シューマン『ピアノ協奏曲』
イラスト/なめきみほ
『ウルトラセブン』の最終回を飾った名曲とは
今日6月8日は、ドイツ・ロマン派を代表する作曲家、ロベルト・シューマン(1810~56)の誕生日です。
音楽に才能を示しながらも、将来を心配する母親の勧めでライプツィヒ大学法学部に進学したシューマンは、そこでも音楽に熱中。ピアノをフリードリヒ・ヴィークに師事し、師の娘クララとの運命的な出会いを果たします。
その後、手の故障によってピアニストになる夢を断念しながらも作曲に専念。ピアノへの熱い思いを込めた『ピアノ協奏曲イ短調』を書き上げます。
「ヴィルトゥオーゾのための協奏曲は書かない」と語っていたシューマンの言葉とは裏腹に、高度な技術を必要とするこの作品の創作過程には、“当代随一のピアニスト”である愛妻クララの存在があったのでしょう。まさに、シューマン夫妻の強い絆が感じられる名作です。
初演は1846年1月1日、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスにおいて、クララ・シューマンのピアノと、献呈者フェルディナント・ヒラーの指揮によって行われています。『ウルトラセブン』の最終回にこの曲がBGMとして登場したことも有名な逸話です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。