クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第284回 ハイドン『交響曲第101番“時計”』
イラスト/なめきみほ
時の記念日だから聞きたい名曲とは
今日6月10日は、時の記念日です。その由来は、天智天皇10年(671年)6月10日に、日本で初めて“時の知らせ”が行われたことが『日本書紀』に記されているからなのだとか。
一方、クラシック音楽における「時計」といえば、ハイドン(1732~1809)の『交響曲第101番“時計”』が有名です。
この名称はハイドンによるものではなく、1798年に出版された第2楽章のピアノ譜『時計のロンド』がきっかけとされています。振り子を思わせる伴奏リズムとシンプルな音楽は、まさに時計のイメージそのものです。
ハイドンは、ハンガリーの貴族エステルハージ家の宮廷楽長などを30年近くも務め、膨大な数の交響曲や弦楽四重奏曲を作り続けた大作曲家です。そのエステルハージ家から暇を出されてフリーランスとなった晩年のハイドンが、1794年に行われた2度目のロンドン旅行において、イギリスの聴衆に披露するために用意したさまざまな作品の中の1つが、『交響曲第101番“時計”』でした。
まさに、時計のように勤勉なハイドンならではの名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。