クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第285回 R・シュトラウス 歌曲『あした』
イラスト/なめきみほ
結婚を記念して妻に贈られた美しい歌曲
今日6月11日は、リヒャルト・シュトラウス(1864~1949)の誕生日です。
ドイツ・ミュンヘンの音楽一家の下に生まれたシュトラウスは、ドイツ後期ロマン派を代表する作曲家です。85年の生涯の中で数多くの名作を生み出し、器楽とオペラの両分野において代表作を残したその偉業は“モーツァルト以来”と称えられる大作曲家です。
その作曲技術は素晴らしく、“音楽によってどんなものでも表現できる”と豪語していたことは有名な逸話です。その言葉通り、ドイツ語圏におけるオペラにおいては、モーツァルト&ワーグナーと並ぶ3大作曲家の1人に数えられ、交響詩はその大半が、近代オーケストラの重要レパートリーとなっているのですからさすがです。
忘れてならないのが、200曲以上もの名作が残された歌曲でしょう。中でも、結婚を記念して、ソプラノ歌手である妻パウリーネに献呈された『あした』の美しさは破格。妻への深い愛情と、未来への希望を感じさせる詩と、そこに寄り添う美しいピアノがとても印象的な名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。