クラシック界随一の変わり者？ リストの再来と称えられたピアニスト、ミケランジェリ

クラシックソムリエが語る「名曲物語365」　難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。連載一覧はこちら＞＞

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第286回　リスト『ピアノ協奏曲第1番』

イラスト／なめきみほ

リストの再来と称えられたピアニスト

今日6月12日は、20世紀を代表するピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ（1920～95）の命日です。

20世紀に活躍した多くのピアニストの中において、“カナダのグレン・グールド（1932～82）と双璧をなす奇人変人”と伝えられる存在がミケランジェリです。しかし、完璧なテクニックと比類のない美しいピアノの音色を駆使した演奏の素晴らしさは圧巻。彼に憧れたポリーニやアルゲリッチが弟子入りしたことも伝説です。

一方、極度の完璧主義によるこだわりから、ピアノや会場の条件が気に入らなければ即キャンセル。開催されるコンサート自体が貴重となって、伝説に拍車がかかったことは言うまでもありません。


その彼が残した最も古い録音とされるのが、1939年のジュネーブ国際コンクール優勝時に演奏したリストの『ピアノ協奏曲第1番』だといわれています。コンクールの審査委員長を務めていた大ピアニスト、アルフレッド・コルトーによる「リストの再来だ」という言葉は、まさにミケランジェリの本質を突き、その輝かしい未来を予見していたといえそうです。

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田中 泰／Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。