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父の日の贈り物 渡辺弘二さん・陽子さんが紡ぐ親子の思い出

2024.06.03

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〔特集〕「ありがとう」の想いを込めて 父の日の贈り物 お父様への日頃の感謝の気持ちを込めた贈り物。心温まる “父の日の思い出” を伺いながら、家族ならではの想いが伝わる逸品をご紹介します。

特集「父の日の贈り物」の記事一覧はこちら>>>

日本では数少なくなったオートクチュールメゾンを50年以上続けている渡辺弘二さんと、仕事のパートナーでもある長女の陽子さん。

右:「コージアトリエ」代表取締役社長 兼 エグゼクティブデザイナー
渡辺弘二さん(わたなべ・こうじ)

1947年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、ロンドン、パリで服飾を学び、1972年に帰国。同年、オートクチュールメゾンを設立。1991年には英国王室アン王女のスーツをデザイン。「究極美の一着」を追求し続けている。


左:「コージアトリエ・プリュス」代表取締役社長 兼 エグゼクティブデザイナー
渡辺陽子さん(わたなべ・ようこ)

1978年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、パリで修業。2008年に父・弘二さんのアシスタントデザイナーに。2019年に「コージアトリエ・プリュス」を設立。色や柄をさりげなく揃えた母娘のシミラールックが好評。

「よく贈るのは身の回りの品。長く愛用してもらえるものを選びます」── 娘・陽子さん

渡辺弘二さんと長女の陽子さんはともにファッションデザイナー。父娘の職場である「コージアトリエ・銀座本店」を訪ねると、温かい笑顔で迎えてくださいました。

お祖父様(銀座のテーラー『壹番館洋服店』創業者の渡邊實さん)もお父様も服飾に携わる家に生まれ育った陽子さんは、ごく自然に二人と同じファッションの道を選んだといいます。

弘二さんと一緒に仕事をするようになった当初は、「父を『先生』と呼ぶことに戸惑いもあり、公私の切り替えに苦労しました」と話しますが、そんな時期を経て、現在は二人のお嬢さんを育てながら仕事に打ち込んでいます。

弘二さんはそんな陽子さんを「ライバルでもあります」と評し、頼もしく思っているご様子。

「僕が好きなもの、必要なものを贈ってくれる。嬉しいですね」── 父・弘二さん

弘二さん宅と陽子さん一家、弟さん一家の住まいが近いことから、週2回は3家族が夕食をともにする仲のよい渡辺家。それぞれの誕生日はもちろん、年中行事も大切にしており、父の日も例外ではありません。

「最近は弟と相談して一緒に贈っています。実用的なものが多いですね」と陽子さん。毎年欠かさずプレゼントをくれる子どもたちについて、弘二さんは「やっぱり嬉しいですね」と目を細めます。

陽子さんと弟さんがこれまでに贈ったのは、「エルメス」のスカーフや「ヴァレクストラ」のコインケースなど、上質で長く愛用できるものばかり。

陽子さんきょうだいが贈った革製ケース付きペーパーナイフとはさみのセットと「ヴァレクストラ」のコインケース。

コインケースは現在、弘二さんの必携品です。

「形も手触りも気に入っています。コインケースを使う習慣はロンドンで修業していた頃からですね。英国のコインは大きいのでポケットに直接入れていると、穴が開いちゃう。それでケースを持つようになりました」。

子どもたちからの贈り物は毎回好評なのかと思いきや、不評だったものも。「よく携帯がないといって騒ぐので」プレゼントしたという携帯電話用のポシェットです。

弘二さん曰く、「せっかくなので、しばらく使ってみましたが、斜めがけにした紐が蝶ネクタイに当たるのが気になって。使わなくなってしまいました」。

いつもそばで父を見ている娘ならではの贈り物でしたが、残念ながら、及第点はもらえず。でも、そんなエピソードからも、父と娘のよい関係性がうかがえます。

弘二さんの蝶ネクタイコレクション。

ポシェットの話に登場した蝶ネクタイは、弘二さんのトレードマーク。

「僕の父が常に赤いタータンチェックのブレザーを着ていたように、店主というのはオリジナリティが必要だと思っていて、僕にとってはそれが蝶ネクタイ。スーツにもセーターにも合うし、軽くていい。自分がベストだと思う形と大きさで、職人さんに作ってもらっています」。

40年ほどオーダーし続けている蝶ネクタイのコレクションは、現在、約100本! 形や大きさとともに譲れないのが、自分で結ぶタイプであることです。

その理由を弘二さんは、「毎朝、蝶ネクタイを結ぶのは、僕の大切なルーティン。結ぶことで、一日を始めるスイッチが入ります」と語ります。

そんなお父様のため、陽子さんがある年の父の日に贈ったのが、レディスのブラウスに用いる服地の残布で仕立てた蝶ネクタイと、共布のチーフ。

ニュアンスのある紫系のチーフと蝶ネクタイは、陽子さんが弘二さんのために選んだ服地でオーダーしたもの。

「紳士ものにはない色や柄がいい」と弘二さんがいえば、「今度また、父に似合いそうな服地でオーダーしてプレゼントします」と陽子さん。

想いのこもった贈り物が増えるにつれ、親子の思い出も増えていきます。

渡辺さん父娘の思い出アルバム

伊豆の旅館「三養荘」での父娘。弘二さん曰く、「目に入れても痛くない頃の陽子さん」が愛らしい。

37年前の渡辺さん一家。中央は陽子さんの母方のお祖母様。弘二さんの“蝶ネクタイ歴”の長さを証明する一枚でもある。

1999年、弘二さんが中国・北京でファッションショーを開催した折のパーティにて。陽子さん、20歳の頃。



(次回へ続く。この特集の一覧>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年06月号

家庭画報 2024年06月号

撮影/本誌・伏見早織 スタイリング/四方章敬 取材・文/清水千佳子

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