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小澤征爾 不朽の音楽人生〔前編〕佐渡裕さん、堤剛さん、マルタ・アルゲリッチさんからのメッセージ

2024.06.10

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小澤征爾さんに捧げる心からの賛歌

堤 剛さん(チェリスト・サントリーホール館長)
「小澤さんの魅力は、人間そのもの」

1974年10月の国連デーにニューヨーク国連本会議場で演奏する小澤征爾さんと堤 剛さん(チェロ独奏)、新日本フィル・桐朋学園オーケストラ。前月に逝去した師・齋藤秀雄に叩き込まれたR.シュトラウス『ドン・キホーテ』など。© サントリーホール

齋藤秀雄(チェリスト・指揮者)門下生として、私は子どもの頃から、小澤征爾さんと音楽を共にさせていただきました。当時からオープンで朗らかな人柄で、皆を引っ張っていく人間的魅力に溢れていました。生涯にわたり仲間やご家族をとても大切にされ、いつも周りの人のことを考え、つながりを大事にされた方です。

小澤さんは桐朋学園音楽部門(当時は桐朋学園女子高校附属音楽科)第1期生、私は第7期生ですが、その前身に「子供のための音楽教室」がありました。戦後の荒廃した日本から世界レベルの音楽家を育てようと、齋藤先生や吉田秀和先生など音楽界の錚々たる方々が始められた場で、主眼とされたのはアンサンブル教育でした。

そこで私たち小中学生オーケストラの練習を指揮、指導された一人が、桐朋の高校生だった小澤さんだったのです。夏休み合宿では一緒に寝泊まりして遊んだりもしながら、練習を重ねました。齋藤先生の指導は非常に厳しく、なかでもよく𠮟られたのが、指揮では小澤さん、チェロでは私(笑)。


小澤さんは「世界のどこででも通用するものを、齋藤先生に教えていただいた」と終生、心から先生を尊敬されていました。さまざまな経験をここで積まれ、礎とされたのでしょう。

常に高みを目指し、最高峰のウィーン国立歌劇場音楽監督にまでなられましたが、同時に、地元・成城では中学の頃の合唱仲間と讃美歌を歌いながらクリスマスの街を巡り歩き、オーケストラのメンバーと野球大会を楽しみ、松本のフェスティバルでは関係者とまさに裸のおつきあい。非常に幅広い人間性を持っていらした。

完璧な指揮テクニックのうえ、彼の動作や表情からオーケストラ全員がメッセージを受け取り、それに応えてベストの音を出す、そういうマジックがあったと思います。もちろん、膨大な譜面から作曲家の意図を読み解き、すべて頭に入れるために、ものすごい努力をなさっていた姿を私たちは知っています。

最後まで力を注がれたのは室内楽でした。海外に出られて、オーケストラの水準の高さの土台には、若い頃から室内楽をして互いに聴きながら音楽で会話する姿勢が身についているからだと実感されたのだと思います。室内楽アカデミーで、細かな楽器奏法までサジェスチョンされ、自分が考えていること、勉強してきたことを若い人たちにどんどん伝えていかれる姿は、とても印象に残っています。

大きな求心力でしたし、その存在は誇りでした。空いてしまった大きすぎる穴を、残された者が少しずつでも埋めていかなければならないと思っています。(談)

© 鍋島徳恭

堤 剛さん(つつみ・つよし)
1942年生まれ。齋藤秀雄、ヤーノシュ・シュタルケルに師事。現在に至るまで、世界各地で演奏活動、録音を精力的に行っている。イリノイ大学教授、インディアナ大学教授などを経て、桐朋学園大学特命教授(元学長)。公益財団法人サントリー芸術財団代表理事。

取材・文/内海陽子 企画協力/ヴェローザ・ジャパン

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