〔特集〕[追悼 情熱の指揮者、その一生]小澤征爾 不朽の音楽人生 後編 世界を舞台に、国境も世代も超えて音楽界の架け橋となった指揮者、小澤征爾さん。愛と、情熱と、挑戦によって紡がれた、偉大なる88年の生涯を辿ります。
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音楽の歓びを次世代につなぐために ──「小澤征爾音楽塾」に懸けた思い
23歳で単身フランスに貨物船で渡り、音楽への強烈な情熱と数々の出会いによって世界への扉を開き、高みへ歩み続けた「世界のオザワ」。ライフワークとしたのは、優れた若い音楽家を育てる教育プログラムでした。
2017年、リハーサルで音楽塾オーケストラを指揮する小澤さん。撮影/本誌・坂本正行
小澤征爾さんが命の限りを尽くし最後まで力を注がれたのが「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」と「小澤征爾音楽塾」の活動です。
「クァルテットは弦楽奏者のすべての基本」と、長野で小さな勉強会から始めた室内楽アカデミーは、広くアジア圏に門戸を開き28年目。スイスでも同様にヨーロッパの音楽学生を対象にした教育を続けられました。
また、ウィーン国立歌劇場音楽監督就任が発表された翌年に、日本で立ち上げたのが「小澤征爾音楽塾」です。
なかでも、世界的オペラ歌手、演出家とともに超一流の舞台を創り上げる中で若手音楽家たちを育成するオペラ・プロジェクトは、小澤征爾さんならではの特別な場です。
2024年3月、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅩ「コジ・ファン・トゥッテ」のカーテンコールの模様。© 上仲正寿_2024 Seiji Ozawa Music Academy
若い音楽家たちは一定の期間、寝食を共にしながら、小澤さんが信頼を置くサイトウ・キネン・オーケストラはじめ第一線で活躍中の音楽家による指導で、濃密な時間を過ごし、小澤征爾の音楽を体感するのです。
小澤さんのオペラへの熱意により、松本では新たに劇場も生まれ、ロームシアター京都を制作拠点とする音楽塾の成果は、子どもを含む多くの聴衆に毎年楽しまれています。
小澤征爾音楽塾がつたえたいこと──小澤征良
父は若いとき、カラヤン先生から「シンフォニーとオペラは車の両輪のようなものだ。両方勉強することがとても大事」と言われ、ザルツブルク音楽祭で《コジ・ファン・トゥッテ》を振る機会を与えていただきました。それがオペラとの出会いとなり、オペラの大変さと楽しさを知って、のめりこんでいったそうです。
父はこのような自分自身の経験から、トップレベルのオペラを若いときに体験する重要さを身をもって知り、若者たちが勉強できるような場を作りたいという夢を持っていました。
父の熱い夢、そしてローム株式会社の佐藤研一郎社長(当時)の熱い想い、この二つが重なって、2000年にスタートしたのが「小澤征爾音楽塾」です。
皆さまのサポートのおかげで、オペラを作り上げていく過程を生で体験しながら、世界の第一線で活躍する歌手や演奏家たちから直接学べるという、世界的にも類を見ない特別なプロジェクトを実現させていただいています。
(2024年「小澤征爾音楽塾 オペラ・プロジェクトⅩⅩ」公式パンフレットより抜粋)小澤征良さん(おざわ・せいら)小澤征爾の長女。作家、サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)代表。
小澤征爾さんが情熱を注いだ名作の数々──公演ポスターで辿る小澤征爾音楽塾の歩み
小澤征爾音楽塾は今までにオペラ11作品と交響曲演奏会を上演。2024年3月の公演では、小澤さんがオペラ・デビューの際に振ったという笑い溢れるモーツァルトの歌劇で満場を沸かせ、師への想いを共にしました。
フォトギャラリーで公演ポスターをご覧いただけます>>