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小澤征爾 不朽の音楽人生〔後編〕世界のオザワがライフワークとした「小澤征爾音楽塾」に懸けた思い

2024.06.11

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小澤征爾さんの熱い想いが、未来に響く「一生懸命さが伝わるんです」「音楽塾に懸けています」

家庭画報本誌では2017年夏に東京と松本で小澤征爾さんの密着取材をさせていただきました。その際に伺ったお言葉を、抜粋でお届けします。

「小学4年生のときに、このピアノに出合い、僕の音楽家への道が始まった ──」
小澤さんと音楽との関係は、一台の、「YAMAHA」のアップライトピアノとの出合いから始まりました。取材当時、小澤さんのオフィスの一室に、当のピアノが大切に置かれていました。撮影/合田昌弘


小澤征爾音楽塾の希望

今、ここで弾いている子たちが一番大事なんです。彼らが音楽の質に対して、つまりアンサンブルに対して、あるいは作曲家が書いたことを忠実にちゃんと再現できるかということに対して、欲望がちゃんと根付けば、もう大丈夫。そこにいくまで、まだちょっと手間がかかる。


作曲家の意図を忠実に再現するには、楽譜を読む理解力が必要なんです。それを再現する技術。そして合奏をする精神。それが時々うまくいかない時もあるわけ。世の中の素晴らしいオーケストラはみんな、それがうまくいってますよ。ウィーン・フィルもベルリン・フィルも。

この塾生たちが、あちこちのオーケストラに行って、そこの原動力になって、いい動きが出るといいなと思います。そうなるような気がします。なぜならみんな、うまくいったらどうだというのを耳で経験していますから。経験するかしないかで、大違いです。

20歳超えるぐらいの間にね、アンサンブルの心構え、技術、耳を、身につけられるか。今、日本はその瀬戸際です。歴史が短いから。それをなんとかつかめば、望みはうんとある。

音楽塾の生徒は、中国や台湾、韓国からも来ていて、彼らは非常に努力している。それが今すごく刺激になっています、お互いに。同じところで暮らして1日中一緒にやってますから。これを大事にしてやりたいですよね。

僕は、音楽塾に懸けていますから。

「子どものための音楽会」を開催

毎年、長野県内の小学六年生を体育館に招いて、音楽塾のオーケストラが演奏会するんです。体育館だからって一生懸命演奏しないようなやつはダメだって、僕は思い込んでます。それが伝わって、みんな必死でやるわけ。その一生懸命さが、やっぱり伝わるんですよね。

僕は演奏家たちにお願いするんです。これ、勝負なんだと。このお客さんたちにちゃんと聴いてもらえるかどうか。楽しく帰ってもらえるかどうか。だから彼らを全部巻き込んで、ちゃんとやらなきゃ。

2017年9月1日、セイジ・オザワ・松本フェスティバル「子どものための音楽会」が、松本市総合体育館で5000人の小学6年生に向けて開催された。この日は小澤さん82歳の誕生日。撮影/本誌・坂本正行

そして学校の先生たちが大協力してくれていて、ありがたいです。子どもの時にいっぺん聴いてもらうのと聴いたことないのでは、その人の人生だいぶ違ってきます。音楽ってそういう力があるんです。

一回本当に聴いたかどうか。子どもたちに良い音楽で親しんでもらう、無理やりにじゃなくて、親しんでもらえる場をつくりたい、そういうふうにありたい。やっぱり音楽やってるんだから、そういう音楽家でいたいですね。

小澤征爾さん(おざわ・せいじ)
1935年中国シャンヤン(旧奉天)生まれ。ピアノを学び、成城学園中学校を経て、桐朋学園で齋藤秀雄に指揮を学ぶ。1959年、ブザンソン指揮者コンクール第1位。タングルウッド音楽祭でミュンシュ、ベルリンでカラヤンに師事。バーンスタインの下でニューヨーク・フィル副指揮者。トロント響、サンフランシスコ響の音楽監督などを経て、1973年より29年にわたりボストン交響楽団音楽監督。2002年、東洋人初のウィーン国立歌劇場音楽監督に就任(〜2010年)。日本では、1984年に師・齋藤秀雄を偲び門下生たちと記念コンサートを開催、サイトウ・キネン・オーケストラを組織。1992年、国際的音楽祭 「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」(現:セイジ・オザワ 松本フェスティバル)設立、総監督。水戸室内管弦楽団総監督、水戸芸術館館長(2013年〜)。新日本フィルハーモニー交響楽団創立(1972年)に携わり、長年活動を続けた。2024年2月6日逝去。

2024年も「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」開催

1984年、小澤さんの発案により齋藤秀雄門下生たちが世界各地から集い、氏の没後10年メモリアルコンサートを行ったことから生まれたサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)。

欧米ツアーでも絶賛されたSKOの国内の活動の場として、1992年9月、国際的音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」が小澤総監督のもとに始まりました。小澤征爾音楽塾生も参加。

2015年「セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)」に名称変更、この夏の開催を前に、小澤総監督はOMF初の首席客演指揮者に沖澤のどかさんを指名。今年のプログラムも決めて、楽しみにされていたそうです。小澤征爾さんの想いと共に、新しいステージが始まります。

OMF首席客演指揮者 沖澤のどかさん メッセージ
「小澤征爾先生の音楽と生き様に憧れる世界中の音楽家の1人として、この特別な音楽祭に戻って来られることを心底光栄で、幸運に思います。偉大な教育家・齋藤秀雄先生と、その教えが世界に通用することを知らしめ熱狂させた小澤征爾先生という二人の巨星。その煌めきを次の世代へと受け継いでいくことを使命とし、全身全霊をかけて取り組みます」

■ 開催日程:2024年8月9日(金)~ 9月4日(水)(チケットは6月8日より一斉発売)
■ 開催場所:長野県松本市内
■ 公式ホームページ:https://www.ozawa-festival.com/

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この記事の掲載号

『家庭画報』2024年06月号

家庭画報 2024年06月号

取材・文/内海陽子 企画協力/ヴェローザ・ジャパン

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