クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第291回 グノー『アヴェ・マリア』
イラスト/なめきみほ
名作に新たな命を吹き込むセンスとは
今日6月17日は、フランス・ロマン派を代表する作曲家シャルル・グノー(1818~93)の誕生日です。
パリに生まれたグノーは、幼い頃に父親を亡くし、ピアニストの母親の手で育てられながら音楽の才能を開花。1839年に、カンタータ『フェルディナン』によって音楽家の登竜門「ローマ大賞」を受賞します。
その後、オペラ作曲家として大成したグノーの代表作といえば、シェイクスピア原作のオペラ『ロメオとジュリエット』&ゲーテ原作のオペラ『ファウスト』が圧倒的に有名です。これはまさに、物語の本質を印象的な音楽によって描き出すグノーの優れたセンスの賜物といえそうです。
すばらしい題材を元にした作品といえば、J・S・バッハ(1685~1750)の名作『平均律クラヴィーア曲集』第1巻の前奏曲ハ長調にメロディを載せた歌曲『アヴェ・マリア』も、グノーを語るうえで欠かせません。
ラテン語の聖句を歌詞に用いたこの作品の完成は1859年。「名作への落書き」などというバッハ・ファンからの陰口もなんのその、“バッハ/グノーの『アヴェ・マリア』"として、今も愛され続ける人気曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。