クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第301回 C・P・Eバッハ『ソルフェジオ ハ短調』
イラスト/なめきみほ
クラシック音楽ジャズ化の筆頭に選ばれた作品とは
今日6月27日は、ルーマニア生まれのジャズ・ピアニスト、オイゲン・キケロ(1940~97)の誕生日です。
特徴は、クラシック音楽のジャズ化。中でもバッハ作品のジャズ化においては、数多くの名作を残しています。その記念すべきデビューアルバムが、1965年に発表された『ロココ・ジャズ』です。スカルラッティや、クープラン、モーツァルト、バッハ作品が収められたこのアルバムは、全世界での累計販売枚数が100万枚を超える大ヒットを記録。
クラシックの名曲をジャズ風にアレンジした音楽の心地よさは、オイゲン・キケロならでは。「プレイ・バッハ」で知られるジャック・ルーシェと共に、このジャンルにおける開拓者的存在となったのです。
そして、この名盤の最初の1曲に選ばれた作品が、C・P・Eバッハ(1714~88)の『ソルフェジオ ハ短調』でした。J・S・バッハの次男で、「ベルリンのバッハ」と呼ばれたC・P・Eバッハは、ハイドンやモーツァルトにも影響を与えた重要人物。スピード感あふれるこの作品を冒頭においてデビューを果たしたオイゲン・キケロのセンスに脱帽です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。