クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第302回 ブラームス『ヴァイオリン協奏曲』
イラスト/なめきみほ
名曲誕生の背景に名演奏家あり
今日6月28日は、ブラームス(1833~97)の盟友として名高い、ヨーゼフ・ヨアヒム(1831~1907)の誕生日です。
当代随一のヴァイオリニストとして活躍したヨアヒムの業績の中でも、一際高く評価されているのが、ブラームスの『ヴァイオリン協奏曲』の初演者であることです。
ドイツ・ロマン派を代表する作曲家ブラームスが残した唯一のヴァイオリン協奏曲が書かれたのは1878年。ブラームス45歳の年でした。創作活動の頂点にあったブラームスが同曲を手がけるきっかけは、避暑地バーデン・バーデンで、ブルッフの『ヴァイオリン協奏曲第2番』を弾いたサラサーテの演奏に感銘したからだと伝えられます。
盟友ヨアヒムからの貴重なアドバイスを受けながら完成した作品の初演は1879年1月1日。カデンツァの作曲を手がけた名手ヨアヒムのヴァイオリンと、ブラームス自身が指揮するゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によって披露されたこの曲は、ベートーヴェン&メンデルスゾーンの作品とともに、“3大ヴァイオリン協奏曲”のひとつに数えられる名作となったのでした。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。