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美味手帖

初夏の手土産に。「メロン」が爽やかに香る、期間限定の和菓子

2024.06.18

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エッセイ連載「和菓子とわたし」

「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2024年7月号に掲載された第36回、黒谷友香さんによるエッセイをお楽しみください。

vol. 36 暗がりの「美」
文・黒谷友香

私が「日本の美」というものを初めてきちんと意識したのは小学生の頃、国語の授業で谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に出会った瞬間でした。


教科書は一部抜粋でしたが、その後の私に読書の喜びや素晴らしさを教えてくれたのは「陰翳礼讃」なのです。今も自宅の本棚に置いておくぐらい私にとっては大切な一冊で、時おり手に取ってその世界に浸っては、ゆったりとした時間を過ごしています。「陰翳礼讃」は日本人の闇やほのかな暗がりの中に美しさを感じる感性、日本古来の生活風習や価値観などが描かれていて、小学生ながら深く納得することができたのです。まさに腑に落ちるという表現がぴったりでした。それまでも読書をして心を動かされる経験はありましたが、「陰翳礼讃」はあまりの感動で身体が震えるぐらいだったのです。長くなりましたが、その章に和菓子に込められている「美」についても描かれていたのです。そこに登場した和菓子は何かというと、羊羹です。子供でしたが羊羹は何度か口にしていました。

「そう云えばあの色などはやはり瞑想的ではないか。玉(ぎょく)のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光りを吸い取って夢みる如きほの明るさを啣んでいる感じ(中略)その羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う※ 」

この文を読み、授業中、腑に落ちまくっている私は、もう何も考えずに羊羹を食べていた頃の私はいないのよ、この感覚を知った今の私は別人! 次に羊羹を食べる時は、よく鑑賞して、よく味わって食べるんだ! 何だったら「陰翳礼讃」を片手に読みながら食べたいわっと思う程でした。実際、そうした様な気がします(笑)。今でも自分でいただいたり、お世話になった方に羊羹や和菓子をお贈りする度に「陰翳礼讃」の素晴らしさに感動し大興奮した子供の私を思い出して、微笑んでしまいます。

※谷崎潤一郎著『陰翳礼讃』改版、中央公論社、1995年改版発行、28〜29ぺージ

黒谷友香
雑誌『mc sister』の専属モデルとしてファッション誌を中心に活躍、19歳で映画『BOXER JOE』に出演し、女優デビュー。数多くの映画・ドラマ・CM に出演する一方、バラエティ番組やラジオパーソナリティ、執筆活動など、ジャンルレスに活躍中。乗馬やDIYが趣味で、25年以上続けている東京と千葉での二拠点生活を送るライフスタイルに、近年、幅広い層から注目が集まっている。
宗家 源 吉兆庵
TEL 0120-277-327
https://www.kitchoan.co.jp/

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年07月号

家庭画報 2024年07月号
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