クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第308回 ピアソラ『タンゴの歴史』
イラスト/なめきみほ
タンゴの歴史に革命を起こした風雲児
今日7月4日は、アルゼンチンのバンドネオン奏者で作曲家、アストル・ピアソラ(1921~92)の命日です。
イタリア移民2世のバンドネオン奏者の父のもとに生まれたピアソラは、3歳のときに両親とともにニューヨークに移住。ジャズやクラシック、タンゴなど、さまざまな音楽にふれたことがピアソラの音楽性に大きな影響を与えたようです。
父の手ほどきによってバンドネオン奏者となったピアソラでしたが、目指すところはクラシックの作曲家。アルゼンチンが生んだ大作曲家ヒナステラ(1916~83)の教えを受けて頭角を現し、パリ留学を果たしたところで出会ったのが、“マドモワゼル”と呼ばれた伝説の音楽教師ナディア・ブーランジェ(1887~1979)でした。
このブーランジェの適切な判断によってタンゴの作曲を勧められたピアソラは、伝統的なタンゴにジャズやクラシックの要素を加えた独自の作風を確立し、一躍時代の寵児となったのです。そのピアソラの代表作の1つ『タンゴの歴史』は、20世紀におけるタンゴの発展の歴史を描いた名作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。