クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第309回 ストラヴィンスキー『エディプス王』
イラスト/なめきみほ
“芸術のデパート”と呼ばれた男の代表作
今日7月5日は、フランスの芸術家、ジャン・コクトー(1889~1963)の誕生日です。
詩人、小説家、劇作家、評論家、画家、映画監督、脚本家など、多方面にその才能を発揮したコクトーが、“芸術のデパート”といわれていたことに納得です。
音楽の世界においては、ピカソ&サティと手がけたバレエ『パラード』を筆頭に、プーランクと組んだジャズ公演や、エディット・ピアフのための演劇『Le Bel Indifferent』など、枚挙に暇がありません。中でもロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフを通じて知り合った、ココ・シャネルやストラヴィンスキー(1882~1971)といった人脈が、コクトーの創作に大きな影響を与えています。
そのストラヴィンスキーとの共作が、オペラ=オラトリオ『エディプス王』でした。ソポクレスの『オイディプス王』を題材にしたコクトーの台本に、ストラヴィンスキーが音楽を手がけたこの作品には“語り部”が存在。上演される国の言葉で進行させるのもコクトーのアイデアでした。
日本においては、1992年の第1回「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」で上演されたことも記憶に残る名作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。