クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第312回 ラフマニノフ 合唱交響曲『鐘』
イラスト/なめきみほ
“鐘に魅せられた作曲家”ラフマニノフ
今日7月8日は、アメリカのペンシルベニア州フィラデルフィアにおいて、アメリカ独立宣言の朗読が行われ、自由の鐘(リバティ・ベル)が鳴り響いた日です。(1776年)
アメリカ合衆国の歴史に大きな意義を持つこの鐘は、アメリカの独立及び、独立戦争のシンボルとしてのみならず、国際的な自由の象徴として、現在もフィラデルフィアの「リバティ・ベル・センター」に保管されています。
さて、「鐘」をイメージした作品を数多く手がけた作曲家といえば、ラフマニノフ(1873~1943)が有名です。
モスクワ音楽院在学中に手がけた、『前奏曲嬰ハ短調“鐘”』は、クレムリン宮殿に鳴り響く鐘の音をイメージした名作であり、ラフマニノフの名を一躍有名にした『ピアノ協奏曲第2番』の冒頭でピアノが奏でる和音も、ロシア正教の鐘の音を模した音楽だと伝えられます。
中でも、エドガー・アラン・ポーの詩に感銘を受けたラフマニノフによる荘厳な合唱交響曲『鐘』は、“鐘に魅せられた作曲家”ラフマニノフの集大成と言えるような大作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。