クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第319回 ヴォーン・ウィリアムズ『海の交響曲』
イラスト/なめきみほ
島国出身の作曲家ならではの海への憧れを聴く
今日7月15日は、海の日です。
海にまつわるクラシック音楽といえば、葛飾北斎による『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が初版の表紙に描かれた、ドビュッシーの交響詩『海』を筆頭に、ベネツィアの海とゴンドラを描いたメンデルスゾーンの『ベネツィアの舟歌』やショパンの『舟歌』、さらには千夜一夜物語の語り手をテーマとした、リムスキー=コルサコフの交響組曲『シェヘラザード』の第1曲「海とシンドバッドの船」などが有名です。
一方、近年急速に評価が高まってきた英国の作曲家、レイフ=ヴォーン・ウィリアムズ(1872~1958)の『海の交響曲』も見逃せません。日本と同じように、周囲を海に囲まれた国に生まれ育ったヴォーン・ウィリアムズは、海へのあこがれも強かったのでしょう。海にまつわる作品をいくつも残しています。
1910年に作曲された『海の交響曲』は、アメリカの詩人ホイットマンの有名な詩集『草の葉』を題材とした作品で、ヴォーン・ウィリアムズが残した9つの交響曲の中でも、最も規模の大きな作品です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。