卵巣がんの発見から治療まで
発症リスクを知って、卵巣がんに備えよう
リスク
卵巣がんは、自身や家族の既往歴などによって発症リスクが異なる。自分のリスクを知って対応を
遺伝的にがんになりやすい遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)●母、祖母、姉妹、おばなど近い血縁者に乳がんや卵巣がんの経験者が複数いる
●父、祖父、兄弟、おじなど近い血縁者に前立腺がんや膵臓がんの経験者が複数いる
リンチ症候群●自身あるいは近い血縁者が40代以下で大腸がんを発症した
既往歴により、がんになりやすい子宮内膜症や、子宮内膜症によるチョコレート囊胞になった経験のある人は発症リスクが上がる
上のいずれにも該当しない●卵巣がんの発症リスクは比較的低い
遺伝性のがんの発症予防や早期発見に向けて
●遺伝的にがんになりやすいかどうかを知りたい場合は、遺伝カウンセリングを受ける
●上記のがんの経験者は、状況によって保険診療で遺伝子検査を受けることができる
●患者の血縁者は条件によって自費で遺伝子検査を受けることができる
※遺伝子検査を受けるかどうかは慎重に決める必要がある
※遺伝子検査についてはコラムを参考に
早期発見
婦人科のかかりつけ医を見つけ、定期的に診察を受ける。
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自覚症状はほとんどない特におなかの張りや便秘が続くなど、普段とは違う感じがしたときはためらわずに受診を
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下腹部の張りやしこり、腹部の圧迫感、がんが膀胱を圧迫することによる頻尿などの自覚症状がある場合には進行していることが多い 診察・検査
問診気になる症状、子宮内膜症などの既往歴、月経や出産経験などについて聞かれる
触診・内診・直腸診おなかの触診、腟から指を入れる内診で子宮や卵巣の状態をみる。肛門から指を入れて卵巣の腫れなどをみる直腸診が行われることもある
超音波(エコー)検査腟を通して、あるいはおなかの表面から超音波を当てて腫瘍の有無や臓器の腫れなどをみる
血液検査卵巣がんがあると数値が上がりやすい血液中のCA125などの腫瘍マーカーを測定する
上記の検査で卵巣がんが疑われる場合には、さらにCT検査、MRI検査、PET検査のような画像検査が行われる
ほかの病気の診察時
内科での腹部の病気の診察、妊娠の検査、子宮頸がん検診などで卵巣がんが見つかることがある
診断
手術卵巣がんの診断は手術で組織を採取して行われる(腹腔鏡が用いられることもある)
●手術中に卵巣や腹部の状態を観察し、卵巣の腫瘍部を摘出する
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卵巣は下腹部の深いところにあるため、体外から組織を採取することが難しい●手術後に摘出した腫瘍の病理検査を行う
上記の結果から、卵巣がんであるかどうか、また卵巣がんであれば進行期と組織型が確定診断される
手術が行えない場合にはCTないし超音波ガイド下での生検が行われる。後の治療の決定のために、採取した組織の遺伝子検査がすすめられることもある
治療
手術 診断のための手術時に、治療も兼ねて、腫瘍と周囲の転移しやすい臓器を切除する。切除範囲はがん細胞のタイプや進行期によって異なる
薬物療法 手術後に薬物療法(主に抗がん剤)を行うのが一般的
緩和療法 心身のつらさや痛みに対するケアをがんの早期から受けられる
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