通常の細型に加え、極細の型があることも感度の高い女性たちの美意識に適う。在庫のない寸法は、既製品でも約半年待ち。既製品4400円〜、誂え品6600円〜。
[銀座むさしや足袋店]
しわなくピタッと足に沿わせる手仕事の妙
「結婚して、母からまず教わったのが足袋の履き方でした」。藤間さんが訪れた先は、何代にもわたり高麗屋に愛され続けている「銀座むさしや足袋店」。
母方の実家で明治7年創業の老舗を、約10年前に継いだ大橋雅庸さん(右)と一緒に。藤間さんの装いは、藍ぼかしの風車が爽やかな夏のひと揃え。愛用のむさしやの足袋で、しわのないすっきりと美しい足もとに。
5代目店主を引き継いだ大橋雅庸さんは「ぶかぶかの足袋は野暮。小さめの寸法をギュッと履くと、玄関へ行くまでの間にしわが伸びて足もとが決まります」と江戸前の着こなしの美学を語ります。
足の人差し指が長めの藤間さんは、足型をとって誂えた足袋を愛用。お義母様の紀子さんの型紙とともに大切に保管されている。既製品でも、寸法を2〜3ミリ単位の細かさで展開しているのが「むさしや」のこだわり。
扱っているキャラコや裏地、こはぜの掛け糸に至るまで、上質な国産素材を厳選。幅が細く足を小ぶりに見せるフォルムは、特に歌舞伎役者の夫人や芸者衆など女性からの人気が高いそう。特有の道具を駆使して全工程を手仕事で行います。
寸法ごとに棚に収まる鉄型は、創業から使い続ける希少な道具の一つ。
足袋の生地を、プレス機を使い10枚単位で裁断するための鉄型。足袋の型紙は、親指、四つ指、底の3枚から成る。
「履く人の足と心に寄り添ったものづくりに感動しました」──藤間さん
「意外と体力を要する作業ですね」。袋状に縫い合わせた足袋を、店主の奥様の祥江さんに教わりながら芯棒で裏返す指先にも、思わず力が入ります。
「かかとに丸みをもたせて立体的に足袋を仕上げることが、履き心地のよさの秘密なんですね」と、藤間さんも成型の仕上げを体験。
“技を受け継ぐ”ことの真価に、改めて思い至るのでした。
失われつつある職人の手仕事を大切に守っていきたい
高麗屋好みの履物や足袋を守り継ぐ店を巡り、愛用の品へいっそうの心を寄せるとともに職人技の存続の難しさも感じたという藤間さん。
「手仕事の継承を絶やさないためにもその魅力を語り継ぎ、伝統文化やきものの楽しさを広く発信していくことが私たちにできることだと感じました」
銀座むさしや足袋店住所:東京都中央区銀座2-13-12
TEL:03(3541)7718
営業時間:8時~16時
定休日:日曜・祝日定休