〔特集〕ミラノデザインウィーク探訪 ミラノサローネとは、「ミラノサローネ国際家具見本市」の通称です。年間わずか6日間の家具の見本市が、組織的には無関係のミラノ市内のデザインイベント「フォーリサローネ(サローネの外)」の活動を促し、「ミラノデザインウィーク」と呼ばれる“世界最高峰のデザインの祭典”を生み出すことになりました。ミラノがなぜ「世界のデザインの首都」になりえたのか。その答えを求めて、世界最大の家具見本市と世界のデザイン潮流を牽引するキーパーソンを探訪。その謎を紐解いていきます。
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【Flexform(フレックスフォルム)】
アジア人初、柴田文江の起用が2024年のサローネ会場の話題に
1959年ミラノ郊外のメーダで創業したフレックスフォルムは、イタリアデザインの大御所アントニオ・チッテリオが40年にわたってクリエイティブ面を監修する一貫性あるブランド。
高品質なモダンデザインのトップブランドという地位を確立しながら、肩ひじ張らない「気取らないエレガンス」が持ち味です。
アントニオ・チッテリオによるアウトドア用の新作モジュラーソファ「オアシス」。フレックスフォルムは、家具のハイブランドがアウトドアコレクションを展開する先駆けとして知られる。
そんな同社が今回、新たに日本人デザイナー・柴田文江さんを起用しサローネの話題を集めました。日本では、体温計や包丁、炊飯器など日用品のデザインで定評のある実力者。
「新作『エリ』では “どんな空間にあっても自分だけのやすらぎをくれるかたち” をテーマにした。自在に動ける遊びがあって、しっかりとプライベート空間が作れる椅子に仕上がっていると思う。リラックスできて、フレキシブル。フレックスフォルムのアイデンティティそのままの作品」と柴田さん。
「エリ」に腰掛ける柴田さん。「リラックスした座り心地のちょっとしたプライべートな空間を感じてほしい」。
Fumie Shibata(柴田文江)
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、大手家電メーカーを経て1994年Design Studio S設立。多摩美術大学教授、2018 - 2019年度グッドデザイン賞審査委員長を務める。著書『あるカタチの内側にある、もうひとつのカタチ』。
「確固たるアイデンティティを持ち、トレンドに追随することなく、独自の道を歩む」── ジュリアーノ・ガリンベルティ(創業家3代目)
ロー・フィエラミラノのブースにて創業家3代目のジュリアーノさんと柴田さん。新作の「エリ」を前にして。
一方、創業家3代目のジュリアーノ・ガリンベルティさんは、「柴田さんはアームチェアに、エレガントに広がる襟のように包み込むようなラインを持たせた。快適さと、時代や流行を超えた独自の美意識を兼ね備えた作品は、フレックスフォルムの思想にマッチする」と評します。
「アントニオ・チッテリオがデザインしたモジュラーソファ『カメロット』は、フレックスフォルムの姿勢と能力を象徴する製品。現代的なデザイン、ゆったりとしたプロポーション、高い快適性、そしてクッションを支える革張りのバーなど、人気の高いディテールが融合し、ソファに強い個性を与えている」とジュリアーノさん。上写真左端のシェーズロング「ジンジャー」は1984年のチッテリオ作品の再提案。消費主義にとらわれないチッテリオ作品の真骨頂。
フレックスフォルム トーキョー
https://www.flexform.jp/(次回へ続く。
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取材協力:ミラノサローネ国際家具見本市
https://www.milanosalone.com/