ジュエリー見聞録 8月 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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主役はロッククリスタル。複雑な作りに職人の手間を見る
解説/山口 遼(宝飾史研究家)
これは珍しい。首から下げるのではなく、首の付け根から上に向かってフィットするようなネックレスは、その形状からフランス語でコリエ・ド・シアン、英語でドッグネックレスと呼ばれます。
ブシュロンの新作、「編み込み模様」を意味する“トリコ”と名づけられたこの作品は、実に複雑な作りです。ブシュロンの職人もさぞ大変だったろうと思います。表面を覆うニット地にも見える山形のシェブロンパターンは、ロッククリスタルにマット加工を施して照らつきを消し、それを裏面から特殊な合金のワイヤーでつなぎ合わせたもの。まるでニットそのもののような柔らかさを感じる質感や、裏面のしなやかな加工に、高い技術力を持つハイジュエラーとしての矜持を感じます。
そして中央に輝くのは、2・01カラットのダイヤモンドなどを贅沢にあしらった円環模様の大きなアクセント。白いロッククリスタルとの組み合わせが非常にモダンで華やかです。
このタイプのネックレス、今では多くの世界の宝石商も、ほとんど手がけていません。首に沿う魅力的なデザインは、身に着けると、はっとするほどの素晴らしい美しさを発揮します。これが似合う女性は、日本にも必ずいらっしゃるでしょう。どうかそうした方に買ってもらって、日本に留まって欲しいと思う、ブシュロンの名作です。
礼服の洗練された装飾やディテールを、優美なハイジュエリーに昇華年に2回、ハイジュエリーコレクションを発表しているブシュロン。毎年1月のコレクションでは、メゾンの歴史やアーカイブから着想を得た作品が発表されます。今年1月のテーマは「パワー オブ クチュール」。かつてヨーロッパの王侯貴族たちがセレモニーで着用した礼服(クチュール)の要素を、硬質なロッククリスタルとダイヤモンドで華麗に表現。ネックレス「トリコ」( WG×ダイヤモンド×ロッククリスタル×ニチノール)1億8216万円(予定価格)/ブシュロン
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