藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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7月の花「ユリ」
ユリ‘カサブランカ’を主役に、白い花を集めたアレンジをお揃いで制作しました。白い花はリンドウ‘ホワイトベル’、リシアンサス‘ボンボヤージュ シルク’、パフィオペディルム‘クレアドルーン’。キイチゴ‘ベビーハンズ‘、コニファー‘ブルーアイス’をあしらい、清涼感のある贈り花に。
藤野幸信/Yukinobu Fujino広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「フルール トレモロ」オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com @fleurstremolo
すっきり美しい一重、ゴージャスな八重咲き。どちらも気品ある姿はさすがユリ!
ちょうど庭でユリが咲く季節です。切り花では昔から定番のユリは、ハウスでも栽培されてほぼ一年中流通しますが、やはり初夏から夏にかけての季節がよく似合う花だと感じます。
ユリでいちばん有名なのはやはり一世を風靡した‘カサブランカ’でしょう。「カサブランカで贈り花をお願いします」とご指名のオーダーもよくいただきます。ただ、なかには純白のユリ=‘カサブランカ’と認識されている方もいらっしゃるようで……。
‘カサブランカ’は一重の白花で超巨大輪。イベント会場を飾るスタンド花などでは、そのゴージャスさが映えるのですが、個人向けの贈り花では花サイズが大きすぎてバランスをとりにくい面もあります。‘カサブランカ’以外にも白花のユリはたくさんあるので、ブーケやアレンジに適したサイズを選ぶようにしています。
オランダ生まれの‘ローズリリー’の一つ、白にうっすら緑がさす‘アイシャ’。中心の花弁が広がってくるとさらにボリューム感ある姿に。
さて、このところの傾向では、花弁が何枚も重なる八重咲きのユリに人気が集まっています。花サイズはそれほど大きくないのですが、ボリューム感があり、すっきり美しい一重のユリとはまた異なる魅力があります。
なかでも注目なのがオランダで誕生した‘ローズリリー’で、名前の通りバラを連想させる花弁の重なり具合です。花粉がなく、香りがマイルドなのも特長。ユリの花粉は手や衣服につくと落ちづらく、制作に取りかかる前に落としておくのですが、‘ローズリリー’をはじめ、八重咲きの品種には花粉が出ないタイプも多く、手間がかからないのはありがたいです。
ただ、「黄色の花粉がつく姿こそユリらしいから」と、花粉をとらないようにとオーダーされるお客様もけっこういらっしゃいます。
ユリは蕾の状態で市場に出るので、届いてから贈り花の送付に合わせて開花調整をする必要があります。八重咲きのユリはつぼみがふっくらした状態で届くので、咲かせやすいのも花屋さんがよく利用する理由の一つだと思います。
ユリを使ったブーケ&アレンジメント
‘ローズリリー アイシャ’をメインに、バラ‘ブルーグラビティ’と白いケイトウ‘アスカセレクト スワプナ’を合わせたアレンジ。ダスティーミラーやコニファー‘ブルーアイス’など、シルバーがかったリーフを加えると、涼しさが感じられる仕上がりに。ユリの蕾のスマートな形がアクセントになっています。
純白のユリはウエディングブーケでも大人気。これは八重咲きの‘アレサ’で、‘カサブランカ’より花がこぶりで使いやすい品種です。カラー‘クリスタルブラッシュ’、バラ‘ブルジョンドゥレーヴ’で白のボリュームを増し、リキュウソウの優しい緑色でナチュラル感を出しました。