クラシックソムリエが語る「名曲物語365」難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第324回 セヴラック『ラングドック地方にて』
イラスト/なめきみほ
故郷南フランスをこよなく愛した作曲家の遺産
今日7月20日は、フランス・ラングドック地方出身の作曲家、デオダ・ド・セヴラック(1872~1921)の誕生日です。
パリで学びながらも、その生涯の大半を故郷南フランスで過ごしたセヴラックの音楽からは、師事していたアルベニスや、ファリャを思わせるスペイン風の音楽、さらには、フランス印象主義にも通じる色彩と豊かな響きが感じられます。
作品を聴いたドビュッシー(1862~1918)が「とても素敵な大地の香りがする音楽だ」とたたえているように、作品が醸し出す長閑さは、パリの喧騒からかけ離れた雰囲気です。
代表作の1つに数えられる『ラングドック地方にて』は、ローヌ川とガロンヌ川に挟まれたセヴラックの故郷を、絵画的に描いたピアノ組曲です。5つの情景それぞれに、セヴラックによる注釈が書き込まれたこの音楽に耳を傾けていると、フランスの名ピアニスト、アルフレッド・コルトーによる「セヴラックは、フランスの音楽家というより、地方の音楽家と言ったほうがふさわしい」という言葉にも納得です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。