クラシックソムリエが語る「名曲物語365」難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第331回 ドップラー『ハンガリー田園幻想曲』
イラスト/なめきみほ
日本民謡にも通じるコブシの効いた名旋律
今日7月27日は、ハンガリーの作曲家、フランツ・ドップラー(1821~83)の命日です。
オーボエ奏者の父からフルートの指導を受けたドップラーは、18歳にしてブダペスト歌劇場の首席フルート奏者となり、その後、ウィーンの宮廷歌劇場の首席奏者を経て、首席指揮者にまで登り詰めます。
ここで見逃せないのが、弟カールの存在です。兄弟揃ってフルートの名手であり、作曲もこなした2人は、“フルートのヴィルトゥオーソ兄弟”としてヨーロッパ中を席巻したのです。彼らが手がけた作品の多くが、超絶技巧を擁するフルートのための小品や、フルート二重奏、2本のフルートのための協奏曲であるのはそのためです。
そのドップラーの代表曲として知られる『ハンガリー田園幻想曲』は、同じハンガリーの作曲家リストの『ハンガリー狂詩曲』同様、情熱的なロマの音楽にエキゾティックな雰囲気を加味した名作です。本来はフルートと管弦楽のための作品ですが、近年は、フルートとピアノによる演奏も広く親しまれています。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。