サイレントキラーの病に備える 第8回（2）鼓動が速くなった、急に胸がズキンとしたなど、不整脈を感じたことがある人は多いでしょう。不整脈には心配しなくてもよいものもあれば、突然死や脳梗塞を起こすものもあります。不整脈の特徴や予防、普段の脈拍測定について、東京医科大学病院 不整脈センター センター長の里見和浩先生に伺います。
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“気づいたときには手遅れ”にならないように「不整脈」
［お話を伺った方］
東京医科大学 循環器内科 主任教授
同大学病院 不整脈センター センター長
里見和浩（さとみ・かずひろ）先生
1994年山梨医科大学卒業。96年〜2013年国立循環器病研究センター勤務。05〜07年ドイツのザンクト・ゲオルク病院に留学。13年東京医科大学循環器内科に移り、17年の同大学病院不整脈センター設立時からセンター長を務める。23年に同科主任教授に就任。日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈学会不整脈専門医。
不整脈は種類が多く、深刻さもさまざま。普段の脈拍数を知っておくことが早期発見に役立つ
心臓には左右上下に4つの部屋があり、上の心房が血液を受け入れ、下の心室が血液を送り出します。心臓の筋肉を動かす電気信号は右心房の入り口にある洞房結節で発生しています。
不整脈は、洞房結節以外のところで電気信号が発生したり、洞房結節の働きが落ちたりといった異常が心房や心室のどこでどのように起こるかで性質や治療が異なります。
患者数が多い期外収縮や心房細動
不整脈を自覚して受診する人の多くは、期外収縮です。これは、ときどき脈拍のリズムが乱れるもので、1拍飛んだ後の次の脈拍がドキンと大きく感じられます。ほとんどの人が経験すると考えられており、「あまり心配しなくてもよいのですが、心室で期外収縮が起こっている場合には、狭心症や心筋梗塞、心筋症などの心臓の病気が原因となっていることがあります」。
患者数が多い不整脈としては、心房細動が挙げられます。洞房結節以外のところで異常な電気信号が発生するのが原因で頻脈になり、脈の強さやリズムも乱れて、動悸、胸の痛み、息切れ、めまい、失神などの症状が出ることがある一方、徐脈になる人もいます。「ただ、3〜5割の人には自覚症状がないといわれています。また、一度起こっても再発するのは半分くらいとされます」。
再発を繰り返し、以前よりも息切れするなと感じているうちに持続性心房細動や慢性心房細動になると心電図検査で見つかるようになります。「いきなり心臓に血栓ができ、それが脳血管を流れて脳梗塞を起こす人もいます」。なお、マラソンやトライアスロンなどの激しい運動をしている人は心房細動のリスクが高まるそうです。
不整脈の多くは長時間心電図検査で診断がつく
脈拍の異常を自覚したときには、自分で脈拍を測定するとともに（次のページコラム）、「例えば、睡眠不足が続いている、お酒を飲みすぎた翌朝、といった、そのときの状況もメモしておいてください。どんなときに不整脈が起こりやすいのかを把握できると、その後の診断にも、ご自身の生活習慣の改善にも役立ちます。そして、時間をあまりあけずに循環器内科か内科を受診してください」。
