クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第337回 ヘンデル オペラ『ジュリオ・チェーザレ』
イラスト/なめきみほ
「来た、見た、勝った」
今日8月2日は、ローマの内戦「ゼラの戦い」において、ジュリアス・シーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル)率いる共和制ローマ軍が、ポントス軍を撃破した日です。(紀元前47年)
この時、友人に送った戦勝報告の手紙に書かれた一文が「来た、見た、勝った」です。これは文筆家としても超一流であったシーザーならでは。最小限の言葉で状況がよくわかる名言といえそうです。
このシーザーを描いた音楽といえば、ヘンデル(1685~1759)が手がけたバロック・オペラ『ジュリオ・チェーザレ(ユリウス・カエサルのイタリア語読み)』が有名です。
1724年、ロンドンのキングス・シアターで初演されたこの作品は、古代ローマにおける最大の英雄ユリウス・カエサルが紀元前47年にエジプト遠征を行った際の、エジプト女王クレオパトラや国王プトレマイオス13世との関わりを描いた壮大な歴史物語です。
勝利と悲しみ、絶望と幸福、愛と憂鬱など、人間の多彩な感情を見事に描いたこの作品は、ヘンデルのオペラの中でも最も人気の高い名作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。