クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第338回 サリエリ オペラ『見出されたエウローパ』
イラスト/なめきみほ
忘れ去られた名作が光り輝いた日
今日8月3日は、イタリアのオペラの殿堂、ミラノ・スカラ座新劇場がオープンした日です。
新劇場は、以前サンタ・マリア・アッラ・スカラ教会のあった場所に建設され、ここから劇場名がとられてスカラ座と名付けられたのです。落成は1778年8月3日。栄えある杮落とし公演には、アントニオ・サリエリ(1750~1825)のオペラ『見出されたエウローパ』が選ばれています。
モーツァルト(1756~91)と同時代の作曲家サリエリの名は、ペーター・シェーファーによる戯曲と、その映画化である1984年公開の『アマデウス』によって一躍世界中の人が知ることになったのではないでしょうか。
戯曲や映画の中にも描かれているように、当代随一の人気作曲家として活躍したサリエリの作品は、今ではすっかり忘れ去られ、サリエリがその才能を嫉妬した天才モーツァルトは、クラシック史上最高の天才と崇められているのですから、“サリエリによるモーツァルト暗殺説”がずっと囁かれてきたことにも納得です。
そしてこの日は、ロッシーニ最後のオペラ『ウィリアム・テル』がパリで初演された日でもあります。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。