クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第348回 ヘンデル『オンブラ・マイ・フ』
イラスト/なめきみほ
CMによって爆発的ヒットとなった名アリア
今日8月13日は、アメリカのソプラノ歌手、キャスリーン・バトル(1948~)の誕生日です。
日本において彼女の名を一躍有名にしたのが、1986年夏に放映が始まったニッカウヰスキーのCMでした。
映画監督の実相寺昭雄が演出を担当した美しい映像を背景に、バトルが歌うヘンデルの『オンブラ・マイ・フ』は大きな話題となり、CM放送直後からニッカウヰスキーには曲や歌手に関する問い合わせが殺到。広告商品「スーパーニッカ」の売り上げが2割増となったことも語り草です。
この評判を受けて、翌年1月に発売されたLP『オンブラ・マイ・フ/キャスリーン・バトル』は、3か月で約25万枚という大ヒットを記録。バトルは、ジャンルを超えた人気歌手となったのでした。
リリックなソプラノ歌手バトルにピッタリの『オンブラ・マイ・フ』は、J・S・バッハと同じ1685年にドイツで生まれ、後年は英国で活躍したヘンデルのオペラ『セルセ』の第1幕冒頭で歌われる印象的なアリアです。
この優雅な音楽は、ヘンデルが残した最も美しいメロディのひとつといえそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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