クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第349回 R・シュトラウス オペラ『ナクソス島のアリアドネ』
イラスト/なめきみほ
作曲者お墨付きの名演奏とは
今日8月14日は、オーストリアの名指揮者、カール・ベーム(1894~1981)の命日です。
20世紀後半のクラシック界において、圧倒的な人気を誇ったヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~89)率いるベルリン・フィルに並び立つ存在が、ベーム率いるウィーン・フィルでした。
イメージ的には、ハンサムで一般人気の高いカラヤンに対し、いぶし銀のようなベームは、クラシックのコア層から高く評価されていたように思えます。特にモーツァルトの解釈に関しては他の追随を許さず、ワルターやクナッパーツブッシュなど、先輩格の大物指揮者からも、全幅の信頼を得ていたことは語り草です。
そのベームが、モーツァルト同様に愛したのが、交流のあった同時代の作曲家、リヒャルト・シュトラウス(1864~1949)でした。
1944年の、「シュトラウス生誕80年祭」においては、自ら祝辞を述べ、作曲者臨席のもと、オペラ『ナクソス島のアリアドネ』を指揮したことは、ベームの輝かしい経歴の中でも白眉と言える瞬間でしょう。この曲を愛したベームは複数の優れた録音を残しています。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。