連載「アスリート×社会貢献活動 スポーツでつながる、広がる社会課題解決の輪」第2回(1) パリ五輪を目前に控え、スポーツ熱がますます高まっています。選手たちの躍動に声援を送るとともに、応援している競技やアスリートが取り組む社会貢献活動にも注目してみませんか。スポーツをテーマに、現代社会が抱える課題や未来について考えていく新連載です。
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過去最多の入場者数を記録した「B.LEAGUE(Bリーグ)」。高まるバスケ熱を、未来へのアクションへ繋ぐ
パリ五輪での日本代表の活躍に期待と注目が集まっているバスケットボール。2023年のW杯では男子が48年ぶりに自力での五輪出場権を獲得し、多くのバスケファンが熱狂しました。
6月末に東京ミッドタウン日比谷で行われた「三井不動産 presents バスケットボールTEAM JAPAN パリ2024オリンピック壮行会」では、パリ五輪へ挑む日本代表選手へ熱いエールが送られた。
男子バスケットボールのプロリーグであるBリーグでは、23-24年シーズンの入場者数が約450万人と過去最多を記録するなど、今勢いがあるスポーツリーグとして注目されています。
Bリーグによる社会貢献活動「B.LEAGUE Hope」
そんなBリーグでは、高まるバスケ熱をよりよい未来へのアクションへ繋ぐため、Bリーグ全体で行う社会貢献活動のビッグプロジェクトとして「B.LEAGUE Hope(ビーリーグ ホープ以下ビーホープ)」を2017年に立ち上げて、様々な活動を行っています。
ビーホープの特徴は“3つの柱”。「ピープル(人)」「ピース(平和)」「プラネット(地球)」
ビーホープの特徴は「ピープル(人)」「ピース(平和)」「プラネット(地球)」の3つの領域で取り組みを続けていることです。
ピープルは文字通り「人」、例えば障がいや病気、貧困などに向き合う子どもとその家族に対するサポートや、多様性を認め合う包括的な社会の実現に向けたアプローチ。ピースは「平和」、復興支援や街づくり、防災。プラネットは「地球環境」に配慮した循環型社会の実現など。
どうしても単発になってしまいがちな社会貢献活動のフィールドにおいて、3つのテーマを立てることで「継続的」な社会貢献活動を行うことが可能になり、その取り組みには多くの賞賛が集まっています。
今回は、そんなビーホープの最新の取り組みをクローズアップするために、5月末に横浜アリーナで開催された23-24シーズンチャンピオン決勝戦「日本生命 B.LEAGUE FINALS(Bリーグファイナル) 2023-24」の会場を取材しました。
Bリーグファンの一大イベント「チャンピオン決勝戦」会場で行われた3つの取り組み【1.ピース(平和)】被災地の中学生を招いた「With 能登 スペシャルゲーム」(この記事)
【2.ピープル(人)】個性を理解し支え合う共生社会へ「ユニファイド スポーツ®」【3.プラネット(地球)】使い捨てプラスチックごみ削減「HEROs PLEDGE(ヒーローズ プレッジ)」この記事では「1.ピース(平和)」から、5月26日(決勝戦2日目)に行われた、被災地の中学生を招いた「With 能登 スペシャルゲーム」について紹介します。
被災地の中学生を招いた「With 能登 スペシャルゲーム」
Bリーグチャンピオンを決定する決勝戦の直前に、メインコートでスペシャルゲームを開催。
ビーホープの「ピース(平和)」の活動のなかには、「With能登」という能登半島地震の復興支援活動のプロジェクトがあります。その一環で行われたのが被災地の中学生を横浜アリーナへ招いたスペシャルゲーム「With能登 スペシャルゲーム」です。
招待されたのは珠洲市立緑丘中学校、輪島市立輪島中学校、輪島市立門前中学校、能登町立能都中学校の4校のバスケ部員30人。チームブラックとホワイトに分かれてこの日だけの特別チームを結成。さらに、Bリーグ所属横浜ビー・コルセアーズの森井健太選手、松崎裕樹選手がヘッドコーチ役として加わり、子供たちをサポートしながら会場を盛り上げました。
写真中央左が横浜ビー・コルセアーズの松崎裕樹選手。右が森井健太選手(石川県出身)。
「バスケットボールは、今僕の一番好きなこと」と話してくれたのは、緑丘中学校の端(はた)統司さん。端さんは、通っていた珠洲市内の中学校の体育館が避難所となって部活動ができない状況だったため、七尾市の中島中学校に転校し、新たな環境のなかで日々の練習に取り組んでいます。
「久しぶりに(被災前に通っていた)緑丘中のみんなとプレーできて楽しかった。自分のチームに戻った時に使えるような技がたくさん身についてよかった」と同じ地域の仲間たちとの再会と交流を楽しんだ様子。
スペシャルゲームでは人一倍の活躍をみせた端さん(写真中央、白のユニホーム3番)。転校先の七尾市の中島中は石川県内でトップクラスのバスケ強豪校でもある。
メインコートのスクリーンに映し出された被災地の被害状況。
能登地域ではいまだ体育館が十分に使えない学校が多く、「部活は週に3回だけ、練習がない日は家で自主練をしています。もっと練習したい」と話すのは輪島中学校の上杉理子さん。今後は「皆で北信越大会への出場を目指して頑張りたい」と、意気込みを語りながら「Bリーグの試合を見たことがなかったので、楽しみ」とチャンピオンシップ決勝戦の観戦にも心を弾ませていました。
チームブラックのキャプテンを担った上杉さんにヘッドコーチ役の森井選手がハイタッチ。
「With能登 スペシャルゲーム」に参加した、石川県出身の森井選手(上の写真)は5年前から珠洲市の学生と毎年練習会を行っていたそう。
「初めて会ったときに小学生だった子たちが中学生になって頑張っている姿を見ることができて、僕も元気をもらえた」と温かな眼差しを子供たちに向けながら「祖母の家が能登地域にあったので、震災直後からすごく心配でした。日常生活がままならず子供たちが元気をとり戻せていないという話も聞いていたので、こういう場をいろいろな方々のおかげで作ってもらえたことは本当にありがたい」と心の内を明かしてくれました。
なにより、プロリーグで活躍する森井選手の姿は子供たちの憧れ。「諦めない姿勢をコートで見せ続けて、プレーでも励ましたい。僕自身もバスケットボールが当たり前にできている環境は普通のことではないと思っているので、新シーズンはもっと良いプレーを見てもらえるように」と力強く決意を語りました。
また、「こういった機会は今後も大切にしていきたい」と話した森井選手は、6月15、16日には「With能登」の活動で珠洲市、輪島市、七尾市へ。
ビーホープと日本バスケットボール選手会のメンバーと共に、ゴールとボールの寄贈や、県内約300名の小学生が参加するバスケットボール教室の開催、また炊き出しのお手伝いなどをしました。
「被災地を訪れて一緒にバスケットをしたり話したり、本当に些細なことでも僕ができることは、今後もやっていきたい」と話す森井選手を始めとする、バスケ界からの被災地支援への想いは、これからもたくさんの人々へ届いていきます。
Bリーグファイナルの会場内に設置された「応援メッセージボード」に、多くの来場者がメッセージを寄せた。
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Bリーグが取り組む社会貢献活動 「B.LEAGUE Hope(ビーリーグ ホープ)」公式サイト
https://www.bleague.jp/b-hope/SNSでも情報を発信しています。
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