スポーツが与える影響力を信じて
井本さんは、「ここ数年、スポーツ界が持つ影響力の大きさを改めて感じてきた」と言います。
「スポーツ界が持つ求心力を、社会課題解決につなげることが出来ると信じています。スポーツは多くの人が注目しますし、熱狂しますよね。そこで課題解決につながるメッセージを発信すれば多くの人に周知できますし、影響も与えやすい。
企業や政治家が『SDGsをやりましょう!』、『脱炭素をやりましょう!』と一生懸命発信しても、残念ながら興味を持たない人は多いように思います。一方、大好きなアスリートや著名人、応援しているチームが発信したり、取り組んだりしていると、行動変容が起こりやすい。これまで活動してきて、それらを実感することは多いですね」。
実際に、積極的に取り組んでくれるチームのサポーターが増えたり、SNSの拡散速度や反応の数がアップしたり。選手やチームにとってもwin-winの相乗効果が見込めます。
「まだまだ始めたばかりで、直接課題解決につながるアクションまでは全然辿りつけていないので、これからです。今は、スタジアムの売店のコップやお皿、カトラリーをリユースできるものに変えたり、試合会場にウォーターサーバーを設置してマイボトルを推奨することをチーム等に提案している状態です。
鹿島アントラーズや川崎フロンターレ、Bリーグでも試合会場でのごみ分別ステーション設置や啓発活動などをしていただき、スタジアムという大きな場が協力してくれています。今後はゴミをそもそも出さないようにし、出てしまうものはしっかり資源化したい。これが全国のスタジアムで当たり前のように導入される日がくることを期待しています」。
“使い捨て”プラごみ削減だけで終わってはいけない
ヒーローズ プレッジでは2027年度末までに、主要スポーツの興行において、使い捨てプラごみを半減するという目標を掲げています。より多くのものをリユースするには、洗浄や製造の施設の問題やそれに伴うコストの問題、さらには行政が行うのか、民間企業が行うのか、いくつもの課題があるとのこと。そんな中、私たち個人がすぐにでも取り組めることはあるのでしょうか。
「身近にはじめられる中で、オススメしたいものが『
mymizu(マイミズ)』というアプリ。このアプリは、水を無料で汲めるお店や場所表示してくれるんです。いつでも水を汲むことができれば、ペットボトルの水は不要になりますよね。本当に些細なことかもしれませんが、多くの方が利用するようになれば、ペットボトルのごみを減らすことができます。
井本さんが日々持ち歩いているというマイボトル。「水色のものは年季が入っていて、長年の相棒です。黒のコーヒータンブラーは、大学の同窓会でつくりました」。
また、井本さんは「意識を変えたら、消費行動も変わる」と話します。
「地球温暖化を引き起こしている、『化石燃料』と呼ばれる石炭、石油、天然ガスの資源の使用がまだ多いにもかかわらず、この事実を知らない人が思いのほか多い」と井本さん。プラスチックの多くは石油から作られていて、レジ袋や食品パッケージ、洋服など……身近な製品にも多く使用されています。また、ユネスコIHE水教育研究所によると、1枚のTシャツを作るのに、バスタブいっぱいのお水を15杯分使っているそうです。
「そのぐらい多くの水やエネルギーを消費して、いろいろなものが生産されている。価格がいくら低くても、資源を大量に枯渇させていることに変わりはないんですね。ですから、買う前にじっくり考えて、できるだけ長持ちさせられる上質なものを買い、さらに大切に着ていく。着ないものはリサイクルに。これも簡単に実践できることなので、ぜひやってみてください」。
いよいよ開幕するパリ五輪。注目していることは?
元オリンピアンの井本さんに、パリ五輪で注目していることを尋ねました。「史上初となる『使い捨てプラスチック使用禁止の大会』ということで、注目しています。大会の公式スポンサーのコカ・コーラ社が大きな飲料メーカーとしてはめずらしい『リフィル』に踏み切ります。成功すると、今後の大きな大会にもインパクトを与えるので、どうなるのかが楽しみです。また、地産地消を掲げ、スタジアムフードの食材はフランス国内のものしか使わない。そうすることによって移動のエネルギー消費を抑えています。そして施設の資材は再生して、使い捨てにはしない。こういった取り組みが日本でも当たり前のようになってほしいですね」。
競技の面で楽しみにしていることは? という質問に、「プラごみの取り組みに注目しすぎていますが」前置きした上で「3年ほどずっと池江璃花子さんの取材を続けてきていて。今回のオリンピックは彼女にとって特別なものなので、競泳陣ともに素晴らしい成績を残してもらいたいですね。それと、協会の理事を務めさせていただいているバドミントン! 選手たちがものすごく頑張ってきた姿を見ているので、全力で応援します。とはいえ、オリンピックはどの競技でも超人的なアスリートたちの活躍を見られるので、そこがいちばんの楽しみですね」。
Information
スポーツ界を横断して使い捨てプラごみ削減に取り組む
「HEROs PLEDGE(ヒーローズ プレッジ)」公式サイト
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