クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第354回 ラヴェル バレエ『ダフニスとクロエ』
イラスト/なめきみほ
“伝説的な興行師”の狂気じみた執念とは
今日8月19日は、セルゲイ・ディアギレフ(1872~1929)の命日です。
敏腕プロデューサーにして、バレエ・リュス(ロシアバレエ団)の主宰者ディアギレフは、「天才を見つける天才」といわれた慧眼によって数多くの才能を発掘します。
その成果は、ストラヴィンスキーをはじめ、プロコフィエフ、ラヴェル、サティ、プーランクなどの作曲家のほか、ピカソやマチス、ミロなどの画家にも及びます。さらには、数多くのバレエダンサーや振付家の育成も手がけた結果が、“総合芸術としてのバレエ”という新たな潮流の確立に繋がります。
そのディアギレフが世に送り出した名作のひとつが、1912年、バレエ・リュスによってパリ・シャトレ座で初演されたラヴェル(1875~1937)のバレエ『ダフニスとクロエ』です。
当時のディアギレフは巨額の借金を抱え、大道具や私物までが差し押さえられるという大変な時期にありました。そのような状況においても、狂気じみた執念によって新作制作を実現し、芸術の未来を切り開いた姿こそが、“伝説的な興行師”の真骨頂だといえそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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