クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第355回 シューベルト『ハンガリーのメロディ』
イラスト/なめきみほ
シューベルトを魅了したハンガリーのメロディ
今日8月20日は、ハンガリーの建国記念日です。
その背景には、ハンガリーのキリスト教化に貢献した、ハンガリー王国初代国王イシュトヴァーン1世の存在があります。カトリック教会において聖人とされる彼にちなんで、8月20日を「聖イシュトヴァーンの日」としてハンガリーの建国記念日に定めたとのことです。
さて、ハンガリーゆかりのクラシック音楽といえば、ブラームスの『ハンガリー舞曲』、リストの『ハンガリー狂詩曲』、ドップラーの『ハンガリー田園幻想曲』などが有名ですが、個人的には、シューベルト(1797~1828)のピアノ小品『ハンガリーのメロディ』がとても気に入っています。
この曲は、1824年にハンガリーの貴族エステルハージ伯爵の娘たちにピアノを教えるために、ハンガリーに赴任したシューベルトが、当地で散歩中に聞こえてきた歌を流用した作品だと伝えられます。
ハンガリー情趣あふれるこのメロディは、『4手のためのハンガリー風ディヴェルティメント』にも使われていますので、シューベルトもお気に入りだったのでしょうね。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。