クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第358回 ドヴォルザーク オペラ『ルサルカ』
イラスト/なめきみほ
人魚姫の悲恋を描いたメルヒェンオペラ
今日8月23日は、デンマークの首都コペンハーゲンの「人魚姫の像」が公開された日です。
アンデルセンの童話『人魚姫』をモチーフとして、1913年に、彫刻家エドヴァルド・エリクセンによって作られた高さ80センチほどのこの像は、コペンハーゲンの観光名所として大人気です。
一方、クラシック音楽における人魚姫といえば、チェコ国民楽派を代表する作曲家ドヴォルザーク(1841~1904)のオペラ『ルサルカ』が人気です。
人間の王子に恋をしてしまった水の精ルサルカを描いたこの作品は、フケーの『水の精』や、アンデルセンの『人魚姫』を参考にして作られたメルヒェンオペラの代表作。中でも、ヒロイン、ルサルカが、月に悩みを訴えながら『白銀の月』を歌う姿は、オペラ史上に残る美しいシーンのひとつでしょう。
この名曲を使った1989年の映画『ドライビング・ミス・デイジー』も見逃せません。老齢の未亡人と黒人運転手の交流を描いたこの物語の中に流れる『白銀の月』は、未亡人の家の庭に咲き誇る花のシーンに重なることで、さらに輝きを放つようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。