クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第361回 ヴォーン・ウィリアムズ『揚げひばり』
イラスト/なめきみほ
イギリスの長閑な田園風景を描いた人気曲
今日8月26日は、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(1872~1958)の命日です。
イギリスの裕福な家庭に生まれたヴォーン・ウィリアムズは、祖国に古くから伝わる民謡や教会音楽の研究をもとに独自の作風を確立した人でした。イギリスの雄大な景色を思わせる親しみやすい音楽の数々は、今に至るイギリス音楽の復興活動に大きく貢献しています。
代表作として知られる、ヴァイオリンとオーケストラのための作品『揚げひばり』もそのひとつ。
民謡風のメロディを背景に、空高く飛翔するひばりの姿を描いたヴァイオリンの調べが、どこか懐かしさを感じさせるこの曲の初演は1920年12月15日。作曲の協力者にして作品の献呈者でもあるイギリスのヴァイオリニスト、マリー・ホールの独奏とピアノ伴奏で行われ、翌1921年6月14日には、ロンドンにおいて、同じくマリー・ホールの演奏によって、オーケストラ伴奏版の初演が行われています。
まさに、「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス」という副題に相応しい、心安らぐ名作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。