ジュエリー見聞録 9月 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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ギメルらしさに溢れた傑作、「乱調の美」の面白さ
解説/山口 遼(宝飾史研究家)
美と呼ばれるものには、いくつもの形がありますが、その一つに「乱調の美」と言えるものがあります。この「ギメル」の新作、ネックレスはまさしくそれをデザインしたものでしょう。使われている宝石は、取り巻きのダイヤモンドを別にすれば、すべてサファイア、様々な色合いのものを揃えていますが、なんともギメルらしいのは、そのカットです。非常に薄く透明感のあるサファイアを、自在にカットして、それぞれをダイヤモンドで取り巻き、繫ぎ合わせたもの。
このネックレスの面白さは、サファイアの色合いが微妙に変化することにもありますが、一番の特徴はサファイアの外形が非常にユニークなことにあります。同じ形のものは一つもありません。おそらく、このうちの何個かは一つのロットとしてギメルに持ち込まれたのでしょうが、それだけではジュエリーにならない。そこからがギメルを主宰する穐原かおるさんの面白さです。同じようなサファイアを探し求め、おそらく、数年はかかったと思いますよ。普通の宝石商なら、そんな面倒なことはやりません。
自由自在な色と形の乱調を追求する、その結果がこの美しいネックレスではないでしょうか。執念とも言えるこだわり、それこそがギメルを世界が注目する宝石商にしている理由です。稀に見る楽しいジュエリーだと思いますよ。
繊細に描き出されるサファイアの美兵庫・芦屋から、唯一無二の世界観でジュエリーを発信するギメル。創立50周年の節目を迎え、その独創性は高まるばかりです。約0.78~2.28ctのサファイアを用いたネックレスとピアスからは、多様な魅力を湛えた宝石への愛が伝わってきます。ネックレス(Pt×サファイア計33.55ct×ダイヤモンド計13.17ct)4510万円 ピアス(Pt×サファイア×ダイヤモンド)330万円/ともにギメル
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