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肌や口の乾き「ドライシンドローム」を鍼灸と漢方の併用で診療。平地治美先生(和光鍼灸治療院)

2024.08.21

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新世代の鍼灸師に訊く 第9回(1) 鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。前回の記事はこちら>>

更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「ドライシンドローム」

平地治美先生(和光鍼灸治療院)

平地治美先生(和光鍼灸治療院)

和光鍼灸治療院 院長 平地治美(ひらぢ・はるみ)先生
1970年、千葉県生まれ。明治薬科大学卒業。漢方薬局勤務を経て東洋鍼灸専門学校に入学。故・寺師睦宗氏に漢方を、故・石原克己氏に鍼灸を学ぶ。2009年に和光漢方薬局を開局。20年に和光鍼灸治療院を開設。鍼灸と漢方薬の両輪で診療に取り組む。日本伝統鍼灸学会理事、日本東洋医学会代議員。漢方・養生に関する一般向けの著書も多い。

更年期に多い腎陰虚による乾燥症を鍼灸と漢方薬の力で改善に導く

鍼灸師と薬剤師のダブルライセンスを持つ平地治美先生が営む和光鍼灸治療院は、鍼灸と漢方薬を併用した診療に取り組む全国でも珍しい鍼灸院です。

2階に併設する和光漢方薬局では多種多様な生薬を揃え、症状に合わせた煎じ薬を調合する。

2階に併設する和光漢方薬局では多種多様な生薬を揃え、症状に合わせた煎じ薬を調合する。

「薬剤師の資格を取った後、漢方薬局に勤務しました。患者さんの不調を治したい一心で漢方医学を勉強するうちに鍼灸と漢方薬は車の両輪であることを知りました。実際に診療で併用してみると、その効果が2倍ではなく3倍にも4倍にもなることをしばしば経験します」
とはいえ、平地先生は“二刀流”にこだわっているわけではありません。「最終的に目指しているのは患者さんが自分自身で健康管理ができるようになることです。その手助けをするものとして鍼灸や漢方薬があるのです」。


更年期は血液が滞る「瘀血(おけつ)」の状態にもなりやすい。鍼だけでなく吸い玉療法(下)を活用することもある。

更年期は血液が滞る「瘀血(おけつ)」の状態にもなりやすい。鍼だけでなく吸い玉療法(下)を活用することもある。

吸い玉療法

ドライシンドロームは腎陰虚(体液不足)で起こる

ドライシンドローム(乾燥症候群)とは、ドライスキン(肌の乾き)、ドライマウス(口の乾き)、ドライバジャイナ(腟の乾き)など不快な乾燥症状の総称です。皮膚や粘膜を潤す働きを持つ女性ホルモン(エストロゲン)が減少する更年期からドライシンドロームに悩まされる人が増えてきます。
「漢方医学の考え方では、五臓(肝、心、脾、肺、腎)のうち、ホルモンや生殖機能と関係が深いのは腎です。腎には腎陰と腎陽があり、生命の源となるエネルギーを作り出しています。鍋に溜めた水(腎陰)を火(腎陽)で炊き、その蒸気がエネルギーとなって全身に行き渡るイメージです」

ドライシンドロームは、腎陰虚と呼ばれる体液不足によって引き起こされると考えられています。前述のイメージでいうと鍋に溜めた水が減り、空炊きになっている状態です。体は鍋の水を補うために体液が失われても命に別状のない皮膚や粘膜、髪などから水分を取り込みます。
「髪がパサついたり肌がカサカサになったりするのは、エネルギーの材料となる体液が減ってきたことを示しており、体内のエネルギーそのものが低下し始めているサインでもあるのです」。

生活習慣の改善をベースに鍼灸や漢方薬を組み合わせる

漢方医学では、健康を陰陽のバランスがとれている状態であるととらえています。そのため、ドライシンドローム対策も陰陽のバランスを整えることが肝心で、腎陰虚では、鍋の水を温存しながら足りない分を補水することが行われます。その具体的な方法として、平地先生は生活習慣の改善をベースに鍼灸や漢方薬を組み合わせて取り組んでいます。

生活習慣の改善で最初に行うのが睡眠不足への対策です。「睡眠が足りないと鍋の水の消費が加速するため、しっかり眠ってもらいます。睡眠不足が解消されると、腎陰虚を引き起こす甘いものに対する欲も消えるようです」。

次に食養生。甘いものに加え、濃い味つけの食事や香辛料も腎陰虚の原因となるため、これらの食べ物を控えるとともに、体に潤いを与える食べ物(粥など)をとるようにします。そして「食事の内容を替えつつ、鍼灸で腎経や肝経のツボを刺激し、その働きをよくすると消化吸収力が高まります。すると、エネルギーを疲労回復やアンチエイジングにより多く使えるようになるため、ドライシンドローム対策にも役立ちます」。

さらに補水や更年期の諸症状への対応を必要とするときは漢方薬を使います。補水効果がある六味丸(ろくみがん)をベースとした知柏地ち黄丸(ばくじおうがん)や杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)は、平地先生がよく処方する漢方薬です。これらの漢方薬にはドライマウスやドライアイだけでなく、頻尿、むくみ、ホットフラッシュなど更年期に起こりやすい症状の改善も期待できるそうです。

「誰もが自分自身の体と向き合い、健康管理できるように手助けしたい」という思いが強い平地先生は、本を通して漢方医学を一般に広めている。

「誰もが自分自身の体と向き合い、健康管理できるように手助けしたい」という思いが強い平地先生は、本を通して漢方医学を一般に広めている。

「症状に応じたオーダーメイド治療ができることも鍼灸と漢方薬のメリットです。ドライシンドローム対策をはじめ、更年期を快適に過ごすために東洋医学の力をご活用ください」。

診療案内

千葉市若葉区小倉台2-1029-31
TEL:043(308)6138 完全予約制
診療時間/9時~18時
休診日/木曜・日曜・祝日
診療費/初診料2000円、治療費5000円、子ども・学生料金あり
https://www.kigusuri.com/shop/wakou/

和光鍼灸治療院 ※「築地本願寺GINZAサロン KOKOROアカデミー」にて漢方講座を開講中。https://tsukijihongwanji.my.site.com/ginzasalon/s/KokoroAcademy

※次回へ続く。

・連載「新世代の鍼灸師に訊く」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年09月号

家庭画報 2024年09月号

撮影/本誌・大見謝星斗 取材・文/渡辺千鶴

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