アイスショーの魅力に開眼した特別な作品
――競技のための練習に目標が見出せなくなったということでしょうか?宇野 はい。ちょうどその頃、23 年7月くらいから『ワンピース・オン・アイス』の練習が始まったんですが、これが本当に楽しくて。やったことがない世界だからこそ、練習を重ねてできるようになるのが嬉しかったですし、みんなでゼロから作り上げる経験が最高に楽しかった。アイスショーの魅力に改めて気がついたことで、現役から一度離れてみてもいいかな、とも思うようになりました。
――現役時代つらかったことはありますか?宇野 よくなかった試合はいくつもありますが、一番つらかったのは練習がうまくいかなかったとき。そういうときほど練習をやりすぎてしまい、怪我のリスクが高くなる。もうやめようと割り切れるときもあるのですが、試合が近いとつい練習し続けてしまうんです。あと、試合でジャンプができたら素晴らしく、ジャンプミスがあればよくない演技……そう思う自分も嫌で。もちろんジャンプに全力を出すのは正しいことなのですが、トータルで表現したい気持ちが強くて。僕にはそのあた
りが現役時代の難しい部分でした。
――納得できた演技や大会はありますか?宇野 2回あります。一つ目は22年に行われた世界選手権で初めて優勝したとき。このときは練習も結果もよかったので、周りの皆も喜んでくれました。あと最終シーズン(23/24シーズン)のNHK杯も、割とよかったかな。このときは2位で優勝という結果は伴わなかったのですが、両方とも練習での目標とやりたいことが自分ではっきり見えていたんです。そして、コーチのステファン(・ランビエルさん)も同じところを見てくれていた。2人が満足する練習をしたうえで納得の演技ができたのが、この2つの大会でした。僕自身、やりきったなと思えました。