「鍼灸や漢方薬はなぜ効くのか」。おそらく、この問いにはうまく答えられないという人がほとんどではないでしょうか。しかし近年、急速に進む科学の発展により、漢方薬や鍼灸が作用する具体的なメカニズムが解き明かされ、「よくわからないけれど効く」といった認識は既に過去のものとなっています。
解明が進む「東洋医学」のメカニズム研究の最前線から、今回は家庭画報ドットコム世代の関心が高い「漢方」をテーマに、貧血、不眠症、精神不安などの改善効果があるとされている加味帰脾湯(かみきひとう)の最新研究について紹介します。
ストレスや精神的な不安、それによる睡眠の悩みを抱えている方は、「漢方という選択肢」に注目してみてはいかがでしょうか。
“幸せホルモン分泌”による作用で、ストレスが改善
文/山本高穂(ヤマモトタカオ)NHKメディア総局 第2制作センター チーフ・ディレクター
加味帰脾湯(かみきひとう)生薬:オウギ、サイコ、サンソウニン、ソウジュツ(ビャクジュツ)、ニンジン、ブクリョウ、オンジ、サンシシ、タイソウ、トウキ、カンゾウ、ショウキョウ、モッコウ、リュウガンニク、(ボタンピ)
加味帰脾湯には、免疫機能を高める作用を持つオウギや、抗炎症作用や鎮痛作用を持つサイコ、鎮静作用を持つサンソウニン、精神安定作用を持つオンジをはじめ14種類の生薬が含まれています。
貧血、不眠症、精神不安などの改善に使われる帰脾湯に、サイコやサンシシを加えた漢方薬で、臨床試験では、がん患者やうつ病患者の睡眠改善が報告されています。
そのメカニズムについてはこれまで詳しく調べられていませんでしたが、近年わかってきたのは、“幸せホルモン”とも呼ばれるオキシトシン分泌の作用です。ストレスを与えた動物を使った実験では、加味帰脾湯の投与によってオキシトシンの分泌が高まり、ストレス行動が改善されることが確認されています。