連載「雨のことば」9月 宝雨(たがらめ)
文=矢部太郎(お笑いタレント・漫画家・気象予報士)
宝雨。秋田地方で日照りが続いた後に降る雨を表す言葉には、その土地の人々の感謝と喜びの念が満ちています。
旱天の慈雨という言葉は待ち望んでいたことの実現や、困っていることへの救いの手をたとえても使われます。
また万物を潤すような大きな恩は雨露(うろ)の恩とも。こうした雨の恵みを表す言葉が生まれたとき、土から離れて暮らす現代の私たちよりも切実に響くものであったことでしょう。全てのいとなみのもとにある大いなる雨を意識する季節。
小さな庭、水やりを忘れ乾いた土に、ポルトガル語のjorro(水の噴出)から雨露の如しと当て字された「如雨露(じょうろ)」で水を撒きながらそんなことを思います。
この時季の雨のことば旱天の慈雨(かんてんのじう)
錦雨(きんう)
涼雨(りょうう)
秋雨(あきさめ)
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