サルコペニアの予防から治療まで
いつの間にか忍び寄るサルコペニアは筋トレと栄養摂取で予防するのが重要
予防
●筋力トレーニングを続けて、筋力と筋肉量を落とさないようにする
●筋肉の材料となるたんぱく質を毎食摂取する
●ビタミンDが不足しないよう、魚類や卵、きのこなどを積極的に食べ、1日に10〜15分日光に当たる
●骨粗しょう症と合併することが多いため、骨量を減らさないようにミネラル類やビタミンDをしっかり摂取する
●食事を摂るのに支障がないよう、日々のオーラルケアを欠かさない
●リスク因子となる糖尿病、低体重（やせ）・肥満、腎臓病、COPDなどにならないようにする。これらの病気があれば治療する
症状
サルコペニアに特有の症状はないが、疲労や歩行スピードの低下などを自覚することが多い（
前ページ参照）
→年のせい、ちょっと病気をしたから、などと思っているうちにサルコペニアが進む。特に入院した後は要注意
診察・検査
サルコペニアの診断に必須の画像検査等はなく、下記の診断基準によって診断される
ほかの病気の診察時
糖尿病、骨粗しょう症、腎臓病、COPD 、低体重などの診察時に見つかることがある
検診・健康診断・人間ドック
サルコペニアの診断に必要な検査項目（握力や椅子からの起立など）は含まれていないのが一般的
診断
一般の診療所や地域におけるサルコペニアの診断の目安
症例の抽出（スクリーニング）ふくらはぎの周囲径の測定 女性33センチ未満、男性34センチ未満
SARC-F 下記5項目の点数の合計が4点以上
困難でない＝0点 いくらか困難＝1点 非常に困難、あるいはできない＝2点
筋力 4.5キロ程度の荷物（2Lのペットボトル2本、あるいは市販のお米など）の持ち運びがどのくらい困難か？
歩行時の補助 部屋の中を移動するのはどのくらい困難か？
椅子からの起立 椅子やベッドから立ち上がるのはどのくらい困難か？
階段上り 階段を10段上るのはどのくらい困難か？
転倒 過去1年間の転倒回数 なし＝ 0点、1〜3回＝ 1点、4回以上＝ 2点
SARC-CalF 上記のSARC-Fの点数に、ふくらはぎの周囲径の点数（女性33センチ未満、男性34センチ未満＝10点、女性33センチ以上、男性34センチ以上＝0点）を加えて11点以上の人が抽出される
評価 上記で抽出された人のうち（1）握力が女性で18キロ未満、男性で28キロ未満、（2）椅子から5回立ち上がるときに12秒以上かかる、のいずれかを満たす場合はサルコペニアの可能性が高い
設備の整った医療機関では、6メートルの歩行速度のような身体機能を測る別の評価法や骨格筋量を測定する画像検査などを用いてサルコペニアと重症サルコペニアの診断が行われる
治療
筋肉量・筋力や食事量、生活習慣には個人差が大きく、糖尿病や腎臓病、骨粗しょう症、COPDなどの持病が合併することも多いため、治療は個別化が必要となる
●サルコペニアに適用される薬はない
●できる範囲で運動を継続して、筋肉量と筋力を落とさないようにする
●低栄養にならないように食事量を増やす工夫をする。特にたんぱく質とビタミンDを十分に摂取する
●糖尿病や腎臓病、骨粗しょう症、COPDなどを治療する
→サルコペニアは多くの病気や症状と関係する骨粗しょう症、糖尿病、認知症、腎臓病、心臓病、骨折、排尿障害、嚥下障害、脱水・熱中症などの引き金となり、これらの病気や症状もサルコペニアを悪化させる要因となる
サルコペニアの予防や治療に役立つ情報源
国立長寿医療研究センター「体力向上パック」寝転んで、座って、あるいは立って行うストレッチ、バランス向上、筋トレ、全身運動が12種類紹介されています。
国立長寿医療研究センター・愛知県東浦町『健康長寿教室テキスト第2版』サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドロームの解説とその予防法が掲載されています。高齢者向けですが、年齢を問わず役に立つ情報が満載です。
日本サルコペニア・フレイル学会 サルコペニア・フレイル指導士名簿サルコペニアやフレイルに関して学び、その評価や指導計画を立案・実施できる、日本サルコペニア・フレイル学会が認定する「サルコペニア・フレイル指導士」の資格を持つ医療関係者の名簿が公開されています。サルコペニア・フレイル指導士の在籍する医療機関にかかっていて、サルコペニアが心配な場合には相談してみるとよいでしょう。
・連載「サイレントキラーの病に備える」の記事一覧はこちら＞＞＞
