“メイドインジャパン”の職人技コスメ 美しさの源流は、日本の“地力(ちりょく)”にあり 第1回 海に囲まれ、多くの山を有し、季節の移ろいが美しい国、日本。この地で育まれる自然の恵みは実に豊かで私たちの健康を支え、暮らしに幸せな彩りをもたらしてくれます。そんな日本の“地力”に着目し、スキンケア成分へと昇華させた職人技が光るコスメを厳選。日本生まれだからこその美の秘密を解き明かします。
日本の西の端、長崎県五島に咲く椿や、古代米を現代に蘇らせた京都府京丹後の黒米など、自然の恵みが息づく化粧品を取材。匠の技が光るものづくりの裏側に迫ります。
ビューティサイエンティスト岡部美代治さんが「FAS」のふるさと・京都を訪ねました。日本でしか作れない化粧品、“ジャパン・ラグジュアリー”を求めて
古代米のパワーを引き出す伝統技術と先進のサイエンス
岡部 作り手の顔が見える“メイドインジャパン”の職人技コスメを紹介してきて、今年で3回目になります。昨秋にデビューした発酵エイジングケア「FAS」は製品発表会で出合ったときからその世界観に強く惹かれ、日本の化粧品の未来を切り拓いていくであろう風格を感じました。発酵スキンケアの第一人者として数々の名品を手がけてこられた伊達さんが参画していらっしゃる、その信頼感も大きいです。
右・ビューティサイエンティスト 岡部美代治さん
大手化粧品会社の研究所、商品開発を経て、2008年より美容コンサルタントとして多角的に活動。科学者の視点で化粧品の価値を見極め、わかりやすい言葉で伝える達人。
左・FSRC 研究所長 伊達 朗さん
米国化粧品会社のプレステージブランドで発酵と肌の基礎研究、製品開発に従事。仏国製薬企業を経て2016年に独立。活躍の場を広げる。工学博士、医学修士、薬学士、薬剤師。
伊達 私も若い時分から、岡部さんのビューティサイエンティストとしての活動に影響を受けてきました。
岡部 原料の黒米の産地である京丹後市芋野を先ほど訪ねて、生産者の情熱を肌で感じてきました。歴史のある特別なお米ですね。
古代米の伝承活動を行う「芋野郷赤米保存会」3代目会長の藤村政良さん、次世代の継承者として今年活動に加わった辻 実久さんから黒米の歴史や特徴を聞く岡部さん。FASに提供される瑞雲黒米は自然栽培で作られる。
伊達 黒や赤色の古代米は古来、献上米や神事のお供え用に栽培されてきました。明治時代に国の農業政策によって生産が中止されたのですが、45年前に芋野で古代米の保存会が立ち上がり、復刻されました。FASは秋田の老舗麴店と共同で研究を進めるなかで、芋野産の瑞雲黒米がもつ滋養豊かなパワーに着目しました。
京都府・京丹後の【黒米】
奈良時代に芋野から赤米が献上されたことを示す荷札。平城京跡の発掘調査で発見された。
黒米はその強すぎる生命力のために管理が難しく、国によって栽培を禁止されたという歴史をもつ。
岡部 京丹後は日本有数の長寿の地域として知られています。風土がもつパワーがあるのかもしれません。黒米の黒い色素はポリフェノールの一種であるアントシアニンですね。
伊達 個人的に黒米や黒豆など黒いものに注目していたときにFASの開発チームとの出会いがあり、発酵科学の研究所の発足に至りました。
無限の可能性を秘めた自然の恵みを肌に届ける。共感をもてる、使うことを誇れる化粧品が肌にもたらす力は大きいと思います──岡部さん
岡部 発酵は先人の知恵と経験が継承され発展してきた伝統的な技術。いわば“生物学的錬金術”だと私は思っているんです。スキンケア科学に精通している伊達さんがその技術を化粧品開発に生かし、エビデンスに基づいた力強い美容成分を作り上げる。Fermentation(発酵)とScience(科学)の融合は「FAS」のブランド名そのものです。
ブランドの軸となる黒米発酵液は未知の可能性を秘め、現在も含有成分や肌効果の研究が続けられる。
伊達 世界各地にさまざまな発酵の歴史がありますが、米の発酵技術において日本は世界トップレベルです。今回は黒米の美容効果を最大限に引き出すために最適な酵母を使い、独自の2段階発酵を行いました。
岡部 2段階発酵は初めて耳にしました。どういう手法ですか。
伊達 1回目の発酵でナイアシンアミドやアミノ酸、ビタミン、ミネラルなど肌に有用な成分をたくさん引き出し、2回目の発酵によって角質層への浸透をよくするための低分子化を実現しています。発酵条件を綿密にコントロールすることで、738種もの成分を含有するFAS独自の「黒米発酵液」ができ上がるのです。
岡部 なるほど。そういう先進性こそが王道を行くブランドの本質でしょうね。
発酵は菌の種類、温度や時間などの発酵条件によって仕上がりが異なる奥深い世界。
真のラグジュアリーは肌と心を豊かに満たす
岡部 今回の特集は日本の恵みがテーマですが、昔からなじみのある素材もスキンケア技術の進化によって可能性が飛躍的に広がるという印象をもちました。
伊達 島国の日本はユニークで多様な生態系を有し、自然に恵まれています。その土地の環境に適して生育するものは必然的に高いパフォーマンスをもっているわけですから、それを上手く取り込んだ化粧品を作ることは非常に理にかなっていますよね。そしてそこで生きて暮らしている日本人の体質や肌に合うことも確かです。それこそがラグジュアリーかつウェルネスなスキンケアだと思うんですよ。
岡部 ラグジュアリーは私も注目するキーワードです。化粧品に共感し、使うことに誇りをもてる、心に豊かさがもたらされることがラグジュアリーだと思います。だから製品の開発背景はとても重要で、FASのチームが、京都の米農家や秋田の麴店という地域のプロフェッショナルとタッグを組んでいいものを作ろうとする情熱こそラグジュアリーだと。素晴らしい素材を原料に、2段階発酵という丁寧な手法で作り込まれた化粧品は心地よさを与えてくれますよね。脳に効く化粧品ともいえる。
京都東山にあるFAS本店。この土地ゆかりの素材が使われた静かで心地よい空間。
伊達 おっしゃるとおりです。肌と脳はつながっていますから、肌が癒やされ満たされることで脳も活性化されます。最終的にはエネルギー豊かな元気な肌になる。それこそがFASが目指す特別なエイジングケアだと考えています。
(次回へ続く)
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