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内野聖陽さんが挑む舞台『芭蕉通夜舟』共感できる部分を探しながら、芭蕉さんの魂に近づいていけたら――

2024.08.20

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今月の人 内野聖陽さん

「過去最大級の怖さを感じますね。昭和の怪優と称される小沢昭一さんに当て書きされた“ほぼ一人芝居”に挑むわけですから。36ラウンドある格闘技の試合のようだなという印象もあります」そう話す内野聖陽さん。

井上ひさしさんが約40年前に小沢昭一さんに書き下ろした『芭蕉通夜舟』で、2012年に十代目坂東三津五郎さんも務めた松尾芭蕉を演じます。

一人語りを中心に、俳句の原点である連句の一形式“歌仙”にちなんで全36景で描き出す、幽玄閑寂の境地を追い求めた俳聖の一代記です。

松尾芭蕉の生涯を描く全36景の“ほぼ一人芝居”

「戯曲を読んで、芭蕉さんは本当にすごい芸術家なのだなと、改めて思いました。なおかつ、僕の中では、侘び寂び、風雅の極みを目指したストイックな“いぶし銀”というようなイメージがあった芭蕉さんを、井上先生がちょっと意地悪な目線で人間味たっぷりに描かれているところが面白いなと。もちろん、一番大事にしたいのは、言葉遊びの色合いが強かった俳諧を、芸術レベルにまで高めた芭蕉さんの苦闘の人生ですが、そのちょっと可愛いところ、実はこうだったんじゃないかなというところも多面的に捉えながら、下品じゃなく表現できたらいいなと思っています」



ちなみに内野さんには、俳句のたしなみはないとのこと。けれど芭蕉の、傑作を生むために言葉の響きを幾度も吟味する姿や、己が目指すものと世間の捉え方や庶民が求めるもののギャップに苦しむ姿には、「表現者の端くれとして共感を覚えます。そんな部分をできるだけ探しながら、芭蕉さんの魂に近づいていけたら」。

文献や資料を読むだけではなく、芭蕉が目にした風景を実際に感じようと、2024年5月には『おくのほそ道』の芭蕉の足跡を辿って、東北を旅したそうです。

「白河の関から北上して、松島、石巻、平泉、立石寺を見て日本海へ抜けて、酒田から象潟へ行って......。車でまわったので、芭蕉さんには怒られそうですが(笑)、そこで詠まれた句を嚙み締めながら景色に触れ、風を感じたことで、イメージがちょっと立体的になったといいますか、芭蕉さんが旅の中で月を感じ、太陽を感じ、宇宙を感じていったことが、実感としてわかる気がしました。撮影や稽古に入る前は、書斎で台本と対峙しながらイメージを深める作業がとても大事なのですが、このところすっかり“書斎俳優”になってしまって......。思いきって旅に出てよかったなと感じています」

肉体を鍛えることで覇気の高い状態を保つ

真摯に役作りに取り組む内野さん。硬派で豪胆な役柄から、テレビドラマ『きのう何食べた?』のケンジのように人当たりのよいチャーミングな役柄まで、見事に自分のものにしてきた55歳は、「役の芯をつかんで、試行錯誤しながら、そこに実際にその人がいるんじゃないかと思えるぐらいのところまでいかないと、自分が納得できないんです」と話します。

息抜きは、お酒を飲むことだという内野さん。「でも、飲みすぎはダメですね。特に夜の深酒は、翌日に残ってよくありません。休みの日の昼に飲むのが一番いいですね(笑)」。

息抜きは、お酒を飲むことだという内野さん。「でも、飲みすぎはダメですね。特に夜の深酒は、翌日に残ってよくありません。休みの日の昼に飲むのが一番いいですね(笑)」。

「とんがっているところはとんがって、作品に立ち向かっていきたい」── 内野さん

一方で、「よくも悪くも、年々大らかになってきた」自覚があり、「日常生活はそれでいいんですが、若い頃から怒りのエネルギーを重視して演技に投入してきた俳優としては、そこは野放しにはできません。まだまだとんがっているところはとんがって、激しさや厳しさをもって作品に立ち向かいたい」といいます。そのためにも肉体を鍛えなくては、と。

「今回も、孤独を求めて旅に出る芭蕉さんを自分が繊細に表現するためには、ある程度強い肉体で覇気の高い状態を保つ必要があると思っています。僕が演じる芭蕉さんを通して、お客様にどんな景色を見ていただけるのか。舞台だからこそ発見できる境地を目指して、演出の鵜山仁さんのもと、稽古あるのみです」

内野聖陽(うちの・せいよう)
1968年神奈川県生まれ。1993年に俳優デビュー。ドラマ、映画、舞台など多くの作品で活躍し、2021年紫綬褒章を受章。出演するドラマ『ブラックペアン シーズン2』が放送中。また映画『八犬伝』が2024年10月、『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(主演)が11月に公開予定。

こまつ座 第151回公演『芭蕉通夜舟』

一人でいることにこだわった松尾芭蕉の人生を、一人でいるところだけを選んで36の場面にした井上評伝劇の快作。伊賀国上野で料理人として召し抱えられた若き日の芭蕉は、主君の死を機に京で俳諧の修業を積み、江戸へ出て売れっ子となるが、やがて虚しさを覚え──。

作/井上ひさし
演出/鵜山 仁
出演/内野聖陽、小石川桃子、松浦慎太郎、村上 佳、櫻井優凜

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
2024年10月14日(月・祝)~26日(土)
指定席8500円ほか
こまつ座:03(3862)5941(平日10時~18時)
URL:http://www.komatsuza.co.jp/program/index.html
※2024年10月29日(火)~11月30日(土)に群馬、宮城、岩手、兵庫、愛知、大阪公演あり

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年09月号

家庭画報 2024年09月号

撮影/筒井義昭 スタイリング/中川原 寛〈CaNN〉 ヘア&メイク/佐藤裕子〈スタジオAD〉 取材・文/岡﨑 香

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