〔特集〕蒐(あつ)めて魅せる「粟田流」愉しみ方 アートと暮らす 作家とつながる 自分のコレクションを展示するギャラリーを開くことはコレクターにとって大きな憧れでもあります。このほどその夢を叶えた粟田貴也さんに「ギャラリーL」のコンセプトや、込めた思いを伺いました。
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“新しい自分”と出会う、見つける
東京・広尾の閑静な住宅街に知る人ぞ知るアート空間があります。
広々としたダイニング・リビングの奥に波を思わせるアートが。以前は本棚がしつらえられていたが、縦253×横325センチの大作を掛ける壁面に改装した。婁正綱「無題 2024」
落ち着いた路地に建つ瀟洒な戸建てのインターホンを鳴らすと「ようこそ、いらっしゃいました」と、笑顔の男性が迎えてくださいました。トリドールホールディングス代表取締役社長兼CEOの粟田貴也さんです。
粟田貴也(あわた・たかや)1961(昭和36)年、兵庫県生まれ。丸亀製麺はじめさまざまな外食ブランドを有するトリドールホールディングスの創業者にして社長。2024年4月、念願のプライベートギャラリー「ギャラリーL」をオープンした。
日本発のグローバルフードカンパニーのトップとして超多忙な毎日を送っている粟田さんに、「ギャラリーL」と名づけたこのプライベートな空間を開いた理由を伺いました。
粟田さんは以前からアートはお好きだったそうです。「感動体験」「満たす」「本能が歓ぶ」といった言葉を経営理念に置いている粟田さんは、自分自身の直感を信じる性格。
絵画や彫刻といった特定のスタイルのアートを蒐めるのではなく、折々、自分自身の琴線に触れたさまざまなものを、心のまま手もとに置いてきました。
玄関には「無題 2022」(左)と書の「有志有途 2023」が掛けられている。
奥様の利美さん。
ウッドデッキと床面の高さが揃い、広さをより感じるダイニングには「無題 2021」が。コレクションの中で奥様の利美さんが一番好きな作品。
そんな粟田さんに大きな変化があったのは、今から2年前。アーティスト婁正綱(Lou Zhenggang)さんとの偶然の出会いがあり、シンパシーを感じた粟田さんはその作品を蒐集するようになりました。
瞬く間にコレクションが20点を超えた頃、「美術館然とせず、我が家のような感覚で作品に親しんでもらえるプライベートギャラリーを作りたい」という思いがふつふつと湧いたそうです。即断即決が信条の粟田さんはすぐに物件探しを始め、一年弱でご自身にとっての夢の空間をかたちにしました。
ウッドデッキの東側に面するエレベーターホールには「心 #4(Heart) 2023」(書)。
お嬢さんの西森梨菜さん。
2階には開放感のある立礼の茶席があり、床には「心」の書が。向かって右にはお嬢さんの西森梨菜さんが一番好きな「無題 2022」が掛けられている。
23歳で奥様とともに事業を興し、よい時も悪い時も一心不乱に経営に打ち込んできた粟田さん。婁さんの作品だけで満たされたこの邸宅ギャラリーで過ごすと、今まで知らなかった “新しい自分” に出会うそうです。
ゆとり、というひと言では到底表すことのできないその「感覚、時間を、大切な人たちにも体感してもらいたい」と粟田さん。夢は未来に向かって広がります。
エレベーターホールには「Life&Love #4 2000」
主寝室には鮮烈な赤が印象的な「無題 2019」。
ギャラリー設計/ジョイントセンター(原兆英、原成光)
Gallery L東京都渋谷区広尾(詳細住所は非公開)
完全予約制。見学希望などお問い合わせは下記まで。
メール:kikuchi@lzgstudio.com
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