〔特集〕蒐(あつ)めて魅せる「粟田流」愉しみ方 アートと暮らす 作家とつながる 自分のコレクションを展示するギャラリーを開くことはコレクターにとって大きな憧れでもあります。このほどその夢を叶えた粟田貴也さんに「ギャラリーL」のコンセプトや、込めた思いを伺いました。
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作家の生きざまに惹かれる ── 蒐集のきっかけ
粟田さんが蒐めている婁正綱作品。近年の絵画作品はカンバスにアクリルで描いています。塗り重ねられた絵の具の厚みの違いが陰影を生み、えもいわれぬ世界観を作品に投影しているのが特徴です。
波や水の流れ、はたまた心の波動を映したようにも見えますが、作家自身は作品にタイトルをつけておらず、観る人の感性にゆだねています。
階段の踊り場に掛けられた「無題 2022」(向かって右)は、粟田さんが初めて購入した作品。青が印象的な作品は「無題 2021」。その左、階段横の作品は「無題 2022」。
コレクターである粟田さんは、もともと作品も含めて婁さんのことを全く知りませんでした。行きつけのお店で偶然に隣の席となり、会話をするうちに意気投合したそうです。アーティストであることを最初は知らなかったけれど、語らいや著書を通じて知るほどに、その生きざまに惹かれていったそうです。
生まれた国も違い、生き抜いてきた軌跡も全く異なる婁さんの半生ですが、これまで激動の人生を歩んできた粟田さんは、ご自身の足跡と重なるものを婁さんに見たのだそうです。作家本人に深い共感を覚えたことは、コレクションの形成に大きな影響を与えたのでした。
理屈を超えた魂の共鳴
元来、粟田さんは具象より抽象画が好み。作家の境涯に共感し一大コレクションを持つに至った粟田さんにとって、想像の翼を広げることができる婁さんの作品との向き合いは無上の喜び。
1階リビングの「無題 2024」は、もともと左右幅が10メートルほどある超大作だったが、ギャラリーLの壁面に合わせて最良の位置でカットしたのだとか。コレクターと作家の信頼感がなければ生まれなかった作品である。