エンターテインメント

「100年に1人の美声」ハイコロラトゥーラ 田中彩子さんの想定外な音楽人生とは

2024.08.29

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今月の音楽人:田中彩子さん

© Andrej Grilc

© Andrej Grilc

一度聴いたら忘れられない声。超高音域のメロディを、軽やかに華やかに歌い、「天使のような」「100年に一人」の美声と称賛されるコロラトゥーラ・ソプラノ歌手、田中彩子さん。

ウィーンを拠点に、ヨーロッパ各地でオペラやコンサートに出演、南米アルゼンチンでのツアーも熱狂的に受け入れられ、毎年日本各地で行うリサイタルも、変化に富んだプログラムでファン層を広げています。

「私の声質にうまく合う曲であれば、どんなジャンルにも挑戦して、未知の領域を発掘していきたい」と、オペラ・アリアや教会ミサ曲から、ジャズやタンゴ、歌詞のない器楽曲などまで、レパートリーは多彩です。

どんなジャンルにも挑戦して、未知の領域を発掘していきたい

類いまれなハイコロラトゥーラという声質だと知ったのは、生まれ育った京都・舞鶴で普通高校に通っていた17歳のとき。


「3歳から習っていたピアノでプロになりたかったのですが、手が小さすぎて、どうしても自分が弾きたいイメージで弾けない、諦めるしかない、でも、音楽のない生活は考えられない......。新しい楽器を手にするよりも歌ならすぐに始められるかと、必死の思いで声楽の先生を訪ねました」

どこまで声が出るか試してみると、ピアノの最も高い音まで発声できたそう。「世界的にも珍しい声だ」という先生の一言に救われ、この道に進むと決意。数か月後、音大生の研修旅行に混じってウィーンを訪れたことが、大きな転機となります。著名な宮廷歌手から、「プロになる気があるなら、すぐに教えたい」といわれたのです。高校を卒業し、単身ウィーンへ。

「迷いはありませんでした」

個人レッスンと語学学校の日々。生活は苦しかったといいますが、「日本では、家の近所しか知らないような狭い世界にいましたが、いろんな人がいていろんな考え方があって、コミュニケーションの仕方もさまざまだと知り、自分ももっと自由に表現していいんだ、と思えました」。

ウィーンの森を散策し、自然の音に耳を傾ける時間にも、育まれたといいます。やがて22歳のときにスイスの歌劇場で最年少のソリスト・デビューを果たします。

「音楽一家でもなく、普通の高校から突然、歌の世界に飛び込んだので、かえって枠にとらわれず柔軟でいられるのかも。ピアノではままならなかったメロディラインも、歌なら自在に動かせます。歌詞のない曲は、より自由な想像ができて大好きです。そのときの気分のまま受け取ってもらえれば」

そして、「よいエネルギーが波紋のように広がっていく、そんな活動をしていきたい」と、凜とした表情で語る歌姫は、「人生って不思議!」と目を輝かせました。

田中彩子(たなか・あやこ)
1984年京都府生まれ、ウィーン在住。2006年、22歳でスイス・ベルン州立歌劇場『フィガロの結婚』にてソリスト・デビュー。日本では、2014年にCDデビュー。グローバルに活動するほか、社会貢献活動や青少年の教育にも携わる。

『ベスト・オブ・ハイコロラトゥーラ』

田中彩子 エイベックス・クラシックス 3300円

田中彩子 エイベックス・クラシックス 3300円

この10年間に発表した4枚のアルバムから、思いを込めて自ら選んだ15曲。ウィーンゆかりの作曲家や作品、思い入れのあるミサ曲、ジャズやミュージカルの名曲、楽器のように歌う「月の光」や「ラ・カンパネラ」など、田中彩子のコロラトゥーラを堪能できるベストアルバム。

10周年記念リサイタル
『春の声 夜の女王のアリア~田中彩子 華麗なるコロラトゥーラ』開催

2024年9月16日(月・祝)の長野・八ヶ岳高原音楽堂から、2024年12月25日(水)の東京・紀尾井ホールまで全国10か所で公演。

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年09月号

家庭画報 2024年09月号

取材・文/内海陽子

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