名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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荒木田(あらきだ)
武家の最高の名家が「徳川」(
10月17日に紹介)、公家の最高の名家が「近衛」(
10月7日に紹介)だとすると、神官の最高の名家はなんでしょうか。武家や公家とは違って、神官に統一的な階級はないので難しいのですが、あえていえば荒木田家でしょうか。
伊勢神宮は内宮と外宮に分かれており、古代から内宮の神官を代々務めているのが荒木田一族です。
古代、天見通命(あまのみとおしのみこと)が倭姫命とともに聖地を求めて各地を巡幸したのち、伊勢の五十鈴川の川上に伊勢神宮を鎮座して、以後代々禰宜をつとめたのが祖と伝えています。「あらきだ」とは「新しく開墾した水田」という意味です。
奈良時代に一門・二門という2つの流れに分かれ、それぞれ周辺の土地を開拓して一族が広がっていきました。そして、それぞれ開拓した土地の地名を名字として名乗り、内宮の神官を世襲しました。
一族のうち、禰宜になることができる家を重代家または神宮家といい、一門の薗田家、井面家、沢田家、二門の世木家、納米家、藤波家、中川家、佐八家などがあり、その中で沢田家が嫡流でした。
明治になると世襲制は廃止されましたが、筆頭家の沢田家は男爵を授けられ、大正時代に名字を一族のルーツである「荒木田」に復しています。
なお、岩手県八幡平市にも「荒木田」という地名があり、ここをルーツとした「荒木田」という名字もあります。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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