ハイクレア城に暮らす ドラマ『ダウントン・アビー』で一躍脚光を浴びた英国ハイクレア城。その城に今も住む第8代カナーヴォン伯爵家の人びとのライフスタイルを、英国フリーライター山形優子フットマンが取材。貴族の暮らしに息づく英国文化をご紹介します。水曜更新。
(今までの連載はこちら) ハイクレア城で暮らす7匹の犬たち
城には7匹の犬たちが。この日はスパニエル1匹が不在。ハイクレア城の歴史には人の生き様だけでなく、動物たちの物語も綴られています。
ドラマ『ダウントン・アビー』ではクローリー家の愛犬としてラブラドールの「アイシス」が登場しますが、“リアル・ダウントン・アビー”であるハイクレア城にも伯爵家の愛犬たちが暮らしています。
城で飼われている犬は20数匹に及びますが、そのうち伯爵家とともに城内で暮らしているのは7匹。うち3匹はラブラドールで、他4匹はスパニエルです。8代目伯爵とレディ・フィオーナが、大の犬好きであることをお分かり頂けるでしょう。
今回は、ハイクレア城の大切な家族である、この7匹の犬たちの物語をご紹介しましょう。
最初に迎え入れたのはラブラドール犬
息子エドモンドさんが2歳になった時、レディ・フィオーナが率先してラブラドールの「パーシー」を飼いました。パーシーは2014年3月に永眠しましたが、パーシーの子の「ベラ」と、ベラが産んだ2匹の雄「スクービー」と「アルフィー」は健在です。
ライブラリーでくつろぐ「ベラ」。レディ・フィオーナは、今ではすっかり年老いたベラを撫でながら、こう語ります。「階段を上る時は後ろから押してあげます。踊り場に着くと、ちぎれんばかりに尻尾を振って嬉しそうに私を見るので、いつも抱きしめてあげるの」。さらに「大変な1日だったとしても、犬たちの忠実な眼差しに癒されます」とも……。
私が老犬ベラを初めて見たのは、ハイクレアで催されたカクテル・パーティでのことでした。パーティ好きのベラに、どういうわけか気に入られて、私の足元に寄りかかったまま動かなくなり、嬉しいような、困ったような、複雑な気持ちの宵でした。