きものチンプンカンプン

阿川佐和子さん、きものリメイクで「蘇る父と母」

2024.09.25

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“プチ・リメイク”のススメ

きりりとハンサムな銀通しの御召しに“プチ・リメイク”した付け帯を合わせて。

きりりとハンサムな銀通しの御召しに“プチ・リメイク”した付け帯を合わせて。

大切な方から譲られたきものを自分らしく着こなしたい……と思いながらも、きものリメイクは時間も費用も要するためハードルが高いと感じている方が多いようです。実は、阿川さんもその一人でした。

「染め替えたり手を加えすぎることなく、手軽にできることはないかしら?」と願う阿川さん。そこで開かずの茶箱から取り出したのは、お父様の消炭色の羽織でした。「直さずとも、このまま着られるんじゃないかしら?」と袖を通す阿川さんに、カリスマ着付師イッシーこと石山美津江さんが、すかさず「男物と女物では仕立てが異なります」と進言。

抜き衣紋に沿うように衿肩あきを調整し、身八つ口を開き、着丈や羽織紐を通すチの位置も阿川さん仕様に“プチ・リメイク”。クールに演出するジャケット感覚の一枚がワードローブに加わりました。仕立て直す前の羽織。シャリ感のある単衣仕立てのため、温暖化の昨今なら真冬以外の幅広いシーズンに活躍しそうです。

仕立て直す前の羽織。シャリ感のある単衣仕立てのため、温暖化の昨今なら真冬以外の幅広いシーズンに活躍しそうです。


リメイクするアイテムを画策するなか、続いて阿川さんが所望したのは着付けの救世主となる付け帯でした。


「形を成すきものに、できる限り鋏を入れたくない」という阿川さんの気持ちを立てて、件の茶箱を探ると洗い張りのために糸を解いたままになっていた紬が見つかりました。仕立て直すのには、パーツが足りなかったため、これ幸いと付け帯へと“プチ・リメイク”。

さらに、「いつかはワンピースに」と茶箱に眠っていた、東南アジアへの旅の思い出を秘めたコットン更紗も付け帯へと生まれ変わりました。スタイリッシュな2本の付け帯が加わったことで、阿川さんのきものライフは一層コーディネートの幅が広がったようです。「裏側も素敵ね」という、ふいの一言から、ギザギザ模様を散らした表面と横段状に糸が連なる裏面の両方を活かすアイディアへと発展。お太鼓部分はリバーシブルに、前帯は2種類の柄をそれぞれ誂えました。

「裏側も素敵ね」という、ふいの一言から、ギザギザ模様を散らした表面と横段状に糸が連なる裏面の両方を活かすアイディアへと発展。お太鼓部分はリバーシブルに、前帯は2種類の柄をそれぞれ誂えました。

きりりとハンサムな銀通しの御召しと合わせ、唐紅の帯締めや帯揚げを効かせたら、ぐっと女性らしい着こなしへと華やぎました。

きりりとハンサムな銀通しの御召しと合わせ、唐紅の帯締めや帯揚げを効かせたら、ぐっと女性らしい着こなしへと華やぎました。



阿川佐和子(あがわ・さわこ)阿川佐和子さん きものエッセイ©Akinori Ito

作家・エッセイスト 1953年東京生まれ。大学卒業後、テレビ番組でのリポーターを機に、報道番組でのキャスターや司会を務める。映画やドラマに出演するなど女優としても活躍。『週刊文春』(文藝春秋)では対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」を、『婦人公論』(中央公論新社)、『波』(新潮社)他では多くのエッセイを連載。テレビ朝日系列『ビートたけしのTVタックル』『日曜マイチョイス』にレギュラー出演中。『レシピの役には立ちません』(新潮社)他、著書多数。

撮影/森山雅智(人物) 西山 航、伏見早織(ともに静物、本誌) ヘア&メイク/田中舞子(VANITÈS) 着付け/石山美津江 構成・取材/樺澤貴子

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